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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

ハンス・ペーター・リヒター三部作『あのころはフリードリヒがいた』『ぼくたちもそこにいた』『若い兵士のとき』(上田真而子 訳)

中学の国語の教科書に「ベンチ」の章が採用されている『あのころはフリードリヒがいた』。ナチスのユダヤ人迫害の様子を、ドイツ人少年の目から、ユダヤ人少年フリードリヒの悲劇として描いた作品ですが、次男の学校では、岩波少年文庫が渡されたそうで、同じ年代の中学生として衝撃を受け、3部作全てが読みたくなった作品のようでした。

実際3部作をそろえようとすると、『フリードリヒ』以外の、続編『ぼくたち〜』と完結編『若い兵士〜』が絶版になっていて、なかなか手に入れられなかったのが想定外でした。3部作とは言いながら、それぞれ、本の内容も、描き方も、少しずつ違っていて、「『フリードリヒ』が小説として読みやすかったのに対して、編を重ねる毎に、どんどんルポルタージュ的要素が強くなってくるのが特徴でした。

 

 

『ぼくたちもそこにいた』は、「フリードリヒ」を見ていたドイツ人少年自身の話です。ナチス・ドイツの青少年団「ヒトラー・ユーゲント」の現実が、淡々と書かれていて、読者は、ユダヤ人への加害者としてのドイツ人ではなく、ドイツ人少年たち自身も、戦争に翻弄された存在だった事実を突きつけられます。

『若い兵士のとき』はその少年が若い将校となった前線での三年間の体験で、こちらは、短くぶつ切れのように、事実だけが生々しく重ねられていきます。ドイツ人将校の綺麗事ではすまされない戦争での個人的体験を重ねていくことで、戦争そのものがもつ残虐さや、戦争が人を人でなくしていく様子が浮かび上がってきます。作者は、物理的にも心理的にも、破壊そのものでしかない戦争というテーマを描くために、筆致を変えていったのかもしれません。

  • 2019.05.04 Saturday
  • 17:44

俳句関連・書籍など 紹介

『NHK俳句岸本葉子の『俳句の学び方」』『NHK俳句夏井いつきの季語道場』

Eテレ「NHK俳句」の司会者を務められている岸本葉子さんが、数多くの選者から学んだ「司会の役得といえるメモ」をもとに作られた入門書です。「選をする俳人の立場からでなく、なんとかして選に入りたい立場から書いた本」ということで、教わる方の知りたい視点から書かれているのが新しい一冊です。例句は、岸本葉子さん自身の俳句で(ご自身もNHK俳句に投句されているそうです)、実体験に沿った添削例もあり、たいへん分かりやすい! 10の格言と57の技、そして、学ぶ際の7つの心得、さらには、岸本尚毅先生とのダブル岸本対談・「助詞力アップ対談添削十番稽古」と盛りだくさんです。

 

 

同じく「NHK俳句」の放送内容を元にしながらも、入門書から一歩進んで、俳句実作者のステップアップを目的としたのが『NHK俳句夏井いつきの季語道場』です。二年分の放送を元にしていて、季語のニュアンスの違いを「季語の六角成分図」にしながらその違いを味わっていく「似て非なる季語たち」(一年目)と、聴覚情報に特化した「音で楽しむ季語」(二年目)が収録されています。その他、「添削道場」や、大量の投句を分類して導きだされた陥りがちな「類想を越える秘訣」の対談、そして、「はじめての句会スタートガイド」まで。季語についてより深く学ぶことのできる一冊です。

 

  • 2019.04.27 Saturday
  • 17:37

実践報告・お便り

福岡女学院高校「ラーニングカフェ『ミニ句会』第2回」

以前ブログご紹介しました福岡女学院高校「ラーニングカフェ『ミニ句会』即吟+みんなで句会(60分)」「ラーニングカフェ『ミニ句会』の感想」(担当:谷口奈々美先生)。引き続いて二学期に開催された二回目の句会の様子が、『わかぎ』第73号に掲載されましたのでご紹介いたします。

 

 

大学生二人、高校生三人、中学生一人、教員二名の八名で行われた句会結果は以下の通りです。「取り合わせの俳句の作り方」で五分で三句詠まれた方もいたようで、賞品のサンタクロースのチョコレートとをかけて、選句合評共に盛り上がったそうです。

 

ラーニングカフェ 句会結果

(画像をクリックすると、PDFファイルでご覧頂けます)

 

また、参加者それぞれに対して、谷口奈々美先生(俳号:真木柱)からコメントが添えられていました。ぜひご参考になさってください。

 

句会の講評

(画像をクリックすると、PDFファイルでご覧頂けます)

 

谷口先生は、日々の授業でも、句会にヒントを得て、グループ活動や看図アプローチを導入した作文実践などもされているそうです。その実践内容なども改めてご紹介できればと考えております。

 

nhkkでは、皆様からの実践報告や、俳句指導に関するご質問など、受け付けております。

メール nhkk.info@gmail.com  または、ブログのバナーよりお寄せください。

  • 2019.04.21 Sunday
  • 10:46

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

飯間浩明『小説の言葉尻をとらえてみた』

『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明さんが、『小説宝石』に連載していた「辞書屋はこうして本を読む」を加筆修正して新書化した一冊です。取り上げられるのは、1960年以降に生まれた人気作家たちの2004年以降に発表された15作品です。(桐島、部活やめるってよ・オレたちバブル入行組・横道世之介・マチネの終わりに・八日目の蟬などなど…)

小説の言葉に注目しながら、それぞれの作品の内容やテーマなどを詳らかにしていく本なのかな、と思って手にとってみたのですが、読んでみると小説を読み深めていくための本ではなくて、国語辞書編集者ならではの言葉見つけ方、小説を読むときのアンテナの立て方を見せていくという趣向の本でした。小説を楽しむための本ではなくて、言葉への感覚を鋭くして「言葉を発見する」楽しみ方を知るための本と言えそうです。

 

 

辞書にまだ載っていない言い回しを探す辞書編集者の目線は、一般の読者にとっては新鮮なものです。飯間さんと共に小説言葉を追っていくことによって、こうやって言葉を集めていくのか! こんなふうに拘っていくのか! こうやって辞書は改められていくのか! と素直に驚かされました。普段から、飯間さんのようなアンテナを持つことはなかなか難しいですが、もしかすると、私たち一般読者でも、好きな作家の言い回しに注目して作家の独自性に近づいていくなどの楽しみ方は可能なのではないか、と感じさせられました。

「人のことば遣いにケチをつけるためにことば尻を捉えるのは感心しません。でも、ことばの面白さを見つけるために、ことばの端々にこだわってみるのもいいでしょう。」(エピローグより)

  • 2019.04.20 Saturday
  • 15:13

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

吉田修一『パレード』

第15回山本周五郎賞受賞作の『パレード』は、私がこれまで出会った吉田修一さんの作品の中で一番好きな作品でした。

ネタバレになるので詳細は書けませんが、とにかく最後の展開に驚きます。作者が何をどう組み込んでいたのか、自分はどこを素通りしてしまっていたのか、確かめられずにはいられない、必ずもう一度読み返さずにはいられない、そんな小説です。

 

 

5章に分かれたこの小説は、都内の2LDKのマンションをシェアしている男女5人それぞれの視点で語られていきます。パレードのように一人一人が行進していく中で、5人が重層的に肉付けされていき、最後の衝撃の展開まで繋がっていきます。

初読の段階では、「善意のみが入場可能な、出入り自由の空間」で、「深刻な自分は見せたくない」共同生活を送りながら、誰もが「この部屋用の私」を創りだし続けていること。誰かが知っている誰かは存在しても、みんなが知っている誰かなんてのはこの世に存在しないこと。誰かのために何かしてやれることなんてないこと…などが作品の中心にあるのだろうな…と読んでいたのですが、最後のおそろしいまでの現実を目の当たりにしてしまうと、人の心に存在する深い闇のようなものを意識せずにいられなくなります。

再読の際は、共同生活とは直接関係ないところでサラリと書き込まれている、「どんな悪人でも入場可能な、敷居の低い天国」「悦びに満ちた顔は、苦痛に歪む顔とそっくりだ」などなどの伏線的叙述が随所に書き込まれていて、(これ以上はネタバレになるので断念…)、再読時もかなり考えさせられ唸らされる作りになっています。また、おそろしき衝撃の展開が結末なのではなく、この後をどう読むか…、結末はそれぞれの読者にゆだねられている…そんな小説でした。その結末を選択(想像)する読者自身が問われている小説とも言えそうです。

  • 2019.04.13 Saturday
  • 16:25