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w closet×JUGEM

実践報告・お便り

俳句イベント記事のご紹介

11月5日付の愛媛新聞掲載記事のご紹介です。

 


松山市立椿中学校の文化体験活動行事で行われた「クロヌリハイク」体験。
新聞を材料に、必要な言葉以外を塗りつぶして俳句を作っていく「クロヌリハイク」は、俳句の授業の導入教材として使えそうです。

 


ミュージカルを見て俳句を作るイベントも。小中学生が、坊っちゃん劇場『よろこびのうた』を観劇して一句に挑戦。
「イベントに合わせて一句」が定着すると、恒例行事などもスペシャルなモノへとひと味変わっていきそうです。

  • 2018.11.09 Friday
  • 22:52

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

俵万智『愛する源氏物語』

第14回紫式部文学賞授賞作品。

『源氏物語』に関する本は数多く出されていますが、本書は、『源氏物語』に出てくる和歌を取り上げて、そこから物語や作中人物を詳らかにしていこうという趣向の一冊です。

俵万智さんと言えば、すでに与謝野晶子の『みだれ髪』の全首を、現代の五七五七七に詠み訳した圧巻の『チョコレート語訳 みだれ髪』でも有名ですが、『愛する源氏物語』も同じ方式で、和歌が現代の短歌に万智訳されています。

 

 

例えば、紫の上と光源氏の最後の相聞

おくと見るほどぞはかなきともすれば風にみだるる萩のうは露 紫の上

はかなさは私の命と似ています風に乱れる萩の上露 (万智訳)

ややもせば消えをあらそふ露の世におくれ先立つほど経ずもがな 光源氏

ともすればはかない露のような世にあなたに後れて生きたくはない(万智訳)

光源氏は、紫の上の気持ちよりも「力点が『残された自分』にある」と指摘したり、結局「出家を許されなかった紫の上は、もう死ぬことでしか光源氏から自由になれない」「死もまた一つの救い」などと展開されていき、和歌から登場人物たちを読み解こうとしている点が大変新鮮です。このような和歌はこのような心情から生まれる…と、和歌を中心に置くことで理解できてくる登場人物というのを興味深く読み進めていきました。

宇治十帖の、浮舟についても、彼女が薫と匂宮のどちらを思っていたか、が和歌から解き明かされていき、目からウロコの終着点でした。

ついつい重きをおかず、通り過ぎてしまっていた『源氏物語』の和歌ですが、会話よりも先にあった和歌の存在を思うとき、やはり、このアプローチは見過ごしにできないなと改めて感じました。歌人ならではの視点の和歌から浮かび上がる新しい『源氏物語』論でした。

  • 2018.11.03 Saturday
  • 12:08

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

西加奈子『炎上する君』

自分の居場所や行き場を見つけられず、人生にさまよっている人の8つの短編集。主人公達がさまよう場所が、現実社会ではなところに存在していて、いわゆるリアルな物語は展開されません。かといってファンタジーとも違っている…、このフワフワとしたリアルさといったらなんだろう…と思いながらの読書でした。全く異なった不思議世界が8つもそろうと、むしろそちらの方が本物なのでは…なんて思わせてしまうのが西加奈子さんなのかもしれません。

 

 

例えば表題作は、炎上するほどの熱をもって生きることなど到底できそうもなかった人が、実は自らも炎上するくらいの熱量を秘めている現実に行き当たる、そんな作品。8つともに、救いとも、希望ともいえるような、これからも続いていくだろうそれぞれ別の結末が用意されています。

人は皆、本当は逃避場所を必要としているのだけれども、それを後ろめたく思う必要はない、迷うときは迷い、進むときは進みなさい、と背中を押してくれるような独特の西ワールドです。

  • 2018.10.27 Saturday
  • 22:30

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

加藤千恵『ハッピー☆アイスクリーム』

加藤千恵さんの17歳の時のデビュー歌集『ハッピーアイスクリーム』のリミックス版とも言える一冊。オリジナルの短歌全てに加えて、自らの高校生の時の短歌を元にした高校生を主人公とした切ない青春小説5編を収録。

高校生の短歌…というと、いかにもありがちな恋の歌を想像するかもしれませんが、いえいえ、甘っちょろいとこで終わらないリアルなナマの女子高生がそこにあります。また、これを元にした短編も、これまた少しずつヒネりがきいていて、願い通りには進んで行かない現実を受け止めようとする等身大の高校生が浮かび上がってきます。もちろん、担当している高校生たちに紹介しました。

「ハッピーアイスクリーム」とは、「会話中、偶然同時に同じ言葉を言ってしまった時に言い合う言葉」で、早く言えたほうが勝ちとか、アイスをおごってもらえるとかというものです。まさに、短歌も小説も、どれも高校生が「ハッピーアイスクリーム」と思わず口ずさんでしまうような高校生「アルアル」感でしめられた一冊でした。

 

 

重要と書かれた文字を写していく なぜ重要かわからないまま

傷ついたほうが偉いと思ってる人はあっちへ行って下さい

泣きそうになるのは誰のせいでもなく時おり強い風が吹くから

カラオケに行ったしコーラも飲んだけどやっぱりさみしいもんはさみしい

「燃やすとき公害になる」補聴器の電池を抜いた入棺のとき

走ってるつもりだったけどもしかしたら走らされてるのかもしれない

いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いてる気がする

夕立が街ごと洗い流すのをどこかで待っていたのだと思う

永遠に醒めない夢はそれはもう夢ではなくてべつの何かだ

いつだって見えないものに覆われて知らないものに守られている

  • 2018.10.20 Saturday
  • 13:56

俳句関連・書籍など 紹介

岡田一実『記憶における沼とその他の在処』

ふじみんこと岡田一実さんの第3句集。『記憶沼』という通称で呼ばれています。

 

 

「な、なんだ、これは!」

読み始めて数ページで、一句一句の濃密さに射貫かれてしまいました。十七音ごとに立ち止まらずにはいられない、もったいなくて簡単には進めない、そんな句が並びます。

,泙砂充群擦了蹐縫疋リとする→△修海砲△辰慎┯譴縫魯辰箸気擦蕕譴→0豢腓了蹐筏┯譴僚伝慇にまたドキリとする

変幻自在なふじみんの俳句はこんな風に染み入ってきます。

 

 

「真正面から」

蟻の上をのぼりて蟻や百合の中

阿波踊この世の空気天へ押す

椿落つ傷みつつ且つ喰はれつつ

 

「裏切りも」

秋晴や毒ゆたかなる処方箋

その中に倒木を組む泉かな

瓜の馬反故紙に美しき誤字のあり

 

「届く五感」

喉に沿ひ食道に沿ひ水澄めり

口中のちりめんじやこに目が沢山

体内を菅は隈なし百千鳥

 

「飄々と」

喪の人も僧も西瓜の種を吐く

端居して首の高さの揃ひけり

文様のあやしき亀を賀状に描く

 

「まっすぐ」

細胞に核の意識や黴の花

みづうみの芯の動かぬ良夜かな

龍天に昇るに顎の一途かな

 

「無常…」

宗教に西瓜に汁の赤さかな

死者いつも確かに死者で柿に色

常闇を巨きな鳥の渡りけり

 

空洞の世界を藤のはびこるよ

白藤や此の世を続く水の音

 

この世もあの世も私も、実は一体で「空洞の世界」があるだけではないか。では、その私とは…。もしかすると、私とは「記憶」そのものなのではないか。そんなふうに感じさせられる句集です。

では、「記憶における沼」とは…。何かが堆積し、また何かが育ちゆくような沼。もしかすると私たちは、時にはそんな沼に停滞しながら、また時には「その他の在処」を確かめながら、自分なりの記憶の形でここにあるということなのかもしれません。

裸木になりつつある木その他の木

「裸木」に目をやることがあれば、「その他の木」を真正面から詠むこともあるように。

手のひらにちょうどいい、少し小さめの句集であるのも、人の内にある「記憶」のサイズのようです。美しい装丁そのままに、あり続ける「水の音」のように、ふじみんの俳句とは、そんな記憶という彼女自身なのでしょう。

 

(句集『記憶における沼とその他の在処』出版記念パーティーにて)

  • 2018.10.13 Saturday
  • 10:13