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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

朝井リョウ『何様』

朝井リョウさんの直木賞受賞作『何者』のアナザーストーリーで構成された短編集『何様』。文庫化ということで再読しました。

『何者』で光太郎の人生を決めさせることとなった初恋の相手とは。理香と隆良の出会いは。社会人になったサワ先輩。烏丸ギンジの現在。瑞月の父親に起こった出来事。拓人とともにネット通販会社の面接を受けた学生のその後の6編。『何様』を通して、『何者』が色付けされていく作品集です。

両書あわせて読んでみて、個人的に印象的だったのは、「それでは二人組を作ってください」ラストの理香の隆良への評価です。『何者』では、拓人と対極にあるような理香でしたが、前書ではうかがい知れなかった理香の本心が暴かれていて、理香という人物の奥深さや恐ろしさ、そして弱さを垣間見た気がしました。また、瑞月の父親に起こった出来事が、最終的に『何者』で瑞月自身に及ぼした影響を思う時、「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」という題名の軽さが余計に人間の人生のあやうさを象徴しているようにも感じてしまいました。とは言え、「何者」かであろうともがいていた前書から一歩進んで、いまだ何者にもなれない自分を、何様なのだと突っ込むような味わいの「何様」では、現実を受け入れていく救いも用意されていて、ある意味読者の背中を押してくれているようにも感じました。

 

 

『何者』と『何様』の表紙を並べると、面接の風景となっているのもなかなか心憎い演出でした。

そして、声を大にしておススメしたいのが、文庫版で追加されたオードリー若林正恭さんの「解説」です。解説を超えて「何様」的に若林さんが裸になってくれていて、一読の価値ありでした! 

  • 2019.09.22 Sunday
  • 14:46

俳句関連・書籍など 紹介

ドナルド・キーン『正岡子規』

9月19日の子規忌ももうすぐです。

数多く出版されている正岡子規の評伝の中から、今年亡くなられたドナルド・キーンさんの『正岡子規』を手に取りました。日本と日本文学をこよなく愛し、2011年3月の東日本大震災の後、日本に帰化されたことでも知られるキーンさんですが、彼が捉える子規像がどんなものなのか、興味深く読み進めました。

子規や子規作品への深い造詣から書かれている本作は、幼少期から最晩年までを追っていく中で、子規を理解するのに外せないオールスターが登場します。また、引用される文献はすべて口語訳付きで載せられていて、明治の文体になれていない読者にとっても読みやすく、子規の生涯を詳しく知ることができます。

 

 

また、キーンさんならではの解説に意外なものが多くて面白く、

・子規は英語力がないと繰り返し述べているが、実は手厳しいものではなく、眉に唾して読んだ方がいい。

・母八重にとって、俳人および歌人といての子規の輝かしい経歴は何の意味もなかった。

・子規は自分の詩人としての仕事について、母や妹に一度も話したことがなく、その重要性が二人には理解できないという結論を下していた。

・子規は蕪村が芭蕉よりも優れていることを証明しようとしたのではなく、芭蕉の「消極美」と蕪村の「積極美」という芸術の世界における二つの美の型を発見しただけである。

・崇拝者的な弟子だけでなく、子規の死後その欠点を非難した若尾瀾水の例もあるが、弟子たちは「一つの革命に参加したという興奮を感じていた」。

・子規の功績によって、俳句や短歌を作ることが現代の世界にいきる経験を語るようになった。

などの指摘などは、ハッと驚かされました。

子規への称賛だけでなく、批判の声なども冷静に分析しながら、日本の伝統文化が危機的状況にあった時代において、「写生」という新しい手法で、俳句や短歌を国民的文芸にまで高めた革命児子規が淡々と描かれた評伝でした。

  • 2019.09.16 Monday
  • 22:26

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

ギュスターヴ・ドレ挿画*セルバンテス『ドン・キホーテ物語』 窪田般彌訳

本日開幕! 二代目松本白鸚さんが、喜寿にして挑むミュージカル『ラ・ マンチャの男』・50周年記念公演! 全国ツアーが始まります。

初日のチケットが手に入ったこともあり、ちゃんと読んだことのなかった『ドン・キホーテ物語』を読んでみることにしました。あまりにも知られた『ドン・キホーテ』ということもあり、全編が気になりながらも、岩波文庫でも6冊と長そうなので手が出ず…。結局(見覚えのあった)ドレの挿絵120枚が載せられているものなら、挿絵が理解を助けてくれるのでは! と期待して沖積舎版を選びました。

 

 

ドレの挿絵が左ページに載せられ、右ページに挿絵を解説するようなドン・キホーテの冒険が述べられているこの本。一枚一枚の絵がとても繊細で驚かされましたが、挿絵がメインになっているため、物語がプツプツ切れて脈絡を感じられないのが難点で、読み慣れるのにかなり苦労しました。物語を味わうために読む本というよりは、物語の全編を知った人が、挿絵を楽しむための本だなと感じました。とは言え、大まかな筋は分かりますし、美しい挿絵が、物語を想像させてくれるので、とりあえず、ドン・キホーテの世界に触れてみたい人にはオススメかもしれません。

やはり、作者セルバンテスのやりたかったものは、全編を読んでみないと分かりそうもありませんが、『ドン・キホーテ』のアレンジという意味で、ミュージカル『ラ・ マンチャの男』と同様に、本作もまたドレの挿絵を中心に置いた『ドン・キホーテ』の一つの解釈なのかなと思いました。ミュージカルでは、メタフィクションとしての『ドン・キホーテ』がまた舞台ならではの演出となっているようです。いよいよ18時開演です。『ラ・ マンチャの男』楽しみです!

  • 2019.09.07 Saturday
  • 10:00

募集&ご案内

山梨日日新聞 高校生俳句・短歌大会 作品募集

山梨日日新聞が発行五万号を記念して開催する「高校生俳句・短歌大会」のお知らせです。
対象は、山梨県内の高校生。
締め切りは10月31日で、郵送またはメールで応募が可能です。
詳細は、以下の写真をご参照ください。

 

 

俳句・短歌ともに、県内の高校生だけの大会とは思えない豪華な選者です! ぜひ挑戦されてみませんか!?


お問い合わせ電話番号 055-231-3112(山梨日日新聞社編集局文化・くらし報道部)

  • 2019.09.02 Monday
  • 23:34

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

田丸雅智『海色の壜』

松山市の「坊っちゃん文学賞」が、16回からショートショートのコンテストとして生まれ変わるそうで、審査委員長の田丸雅智さんが、松山市出身で新世代ショートショートの旗手として活躍中だと知り、読んでみたくなりました。

一編を数分で読めるショートショートというジャンルの存在は知っていましたが、私自身はあまりなじみがなく、興味深く読み始めました。「簡単に言うと『短くて不思議な物語』、もっと言うと『アイデアと、それを活かした印象的な結末のある物語』」をショートショートというのだそうです。

 

 

『海色の壜』は、「海を閉じ込めよう」とした作品群を含めた20編の作品集です。一番好きだったのは松山の三津を舞台にした「海酒」で、完成度からも、また、夢や郷愁、そして、読者それぞれの海への思いを載せることのできる点からも、心地よく読み進められた作品でした。どうやら「海酒」は、2012年樹立社ショートショートコンテストで最優秀賞に輝き、2016年にピース又吉氏主演で短編映画化もされた作品だったようで、納得! でした。

その他、狂気的な心の闇をのぞくような「蜜」や、どんでん返し的不如意なエンディングにで驚かされる「壁画の人々」などが好きでした。全体を通しては、せつなさを感じながらも、前向きな希望を感じさせたり、人のよすがとなる救いのようなものを描いていく作家さんだなと感じました。

 

ショートショートを書く醍醐味は、と尋ねられると、ぼくはいつもこう答えます。

たくさんの自分の好きなものや大切な思い出を、理想の形に変えて人に伝えることができること、だと。(あとがきより)

  • 2019.08.31 Saturday
  • 19:26