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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

山田詠美『賢者の愛』谷崎潤一郎『痴人の愛』

谷崎潤一郎『痴人の愛』に真っ向から挑んだ話題作、山田詠美さんの『賢者の愛』が文庫になっていたので、改めて両作品を再読。

『賢者の愛』の裏表紙には、

「幼い頃からの想い人、諒一を奪った親友の百合。二人の息子に『直巳』と名付けた日から、真由子の復讐が始まった。二十一歳の直巳を調教し、“自分ひとりのための男”に育てる真由子を待つ運命は−。」

とありますが、もちろん、そんな簡単な話ではありません(笑)。

(ちなみに、2016年にwowowでドラマ化されていましたが、衝撃のストーリー展開に重きを置いている作りで、『痴人の愛』を下敷きにした故に出てきている『賢者の愛』の味や面白みの部分はドラマには描かれず残念でした。)

 

 

(ネタバレにならない範囲で…)谷崎の『痴人の愛』での「譲治とナオミ」の関係にあたる関係がいくつも、何重にも織り込まれていて、一筋縄ではいきません。真由子・直巳・百合・諒一、そして真由子の父など登場人物は、一直線には繋がらず、それぞれの中に、いくつもの「譲治とナオミ」的関係を見いだすことができます。そして、敵対(!?)関係にある真由子と百合の関係にさえ、どちらがどっち…と考えられる要素が…。

しかも、『賢者の愛』の冒頭では『痴人の愛』について、「二人でひとつの痴人という生き物。その下等動物にも似た生態から生み出される愉悦を描いた傑作」とあり、題名の「賢者」の意味とは…など、考えどころも満載です。山田詠美さんの術中にはまりながらも、読者がそれぞれに、自分の見つけた「譲治とナオミ」的関係に答えを出す楽しみを味わえる作品です。

余談ですが、『賢者の愛』には『ぼくは勉強ができない』の時田秀美くんが大人になって登場していて、大の山田詠美ファンの私としては別の意味でも楽しめた作品でした。

  • 2018.04.14 Saturday
  • 12:19

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

河野裕子・永田和宏『たとへば君』『家族の歌』

歌人夫婦(河野裕子・永田和宏)の40年間の相聞歌集『たとへば君 四十年の恋歌』と、家族(全員歌人)のリレーエッセイ『家族の歌 河野裕子の死を見つめて』。

高校の国語の教科書にも載っている表題歌。毎回授業の頭に、俳句やら短歌やら詩やらを紹介しているのですが、このお二人の相聞歌は生徒達のウケも良く、何回か連続で紹介することが多いです。


★たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか 裕子
★きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり 和宏 

 

☆二人が出会った時裕子さんには恋人がいた、なんてエピソードを付け加えるまでもなく、生徒達にはハッとさせられる一首のようです。

☆逢うと遭うが効果的で、「君と出会って見方も考え方もすべて変わってしまった」なんて言って(言われて)みたい高校生の心を掴みます。

 

 

大学時代に出会った二人は、結婚し、裕子さんが乳ガンで亡くなるまで添い遂げます。歌人夫婦ならではの相聞歌集で、発病後は目の前にある「死」が当たり前のことのように詠まれていきます。裕子さんは、死の前日まで詠み続け、夫和宏さんと娘紅さんが最期を看取りました。

 

★手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が 裕子(絶筆)
★あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない 和宏

 

永田家は皆が歌人という珍しい家族構成。「歌なら本音がいえるから」との裕子さんの発案で始められた、死を挟んだ二年間の家族のエッセイ集『家族の歌』も、様々な切り口で生徒達に紹介できそうな一冊です。エッセイに添えられる短歌がより心に染み渡ってきます。

  • 2018.04.07 Saturday
  • 11:53

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

坂口安吾『桜の森の満開の下・白痴』『堕落論』

花盛りの日本です。桜はなぜにこんなにも美しいのでしょう。この時期だけ人を別世界に連れて行ってしまう桜を思うとき、確かに桜には人を狂わせるような魔力があるのではないか…。ふと安吾の『桜の森の満開の下』を思う時期でもあります。

ということで坂口安吾。高等学校の教科書にも収録されている「日本文化私観」は、生徒達の評判も良い作品ですが、無頼派の好きな私としてはどっぷり安吾節の強いものを…。

 

 

安吾の評論では「堕落論」が有名ですが、堕ちきることによって自己を発見&救済するという発想は、ある意味究極のプラス思考なのかもしれないなあと。古い習慣や道徳に嫌悪を示し、道徳的価値判断をしない無頼的作品が、なぜか読者を惹きつけてしまうのは、人間の欲望こそが生活の真実であり、人間の真実だというところに軸足を置いているからなのでしょう。そして、人間は、悲しく、孤独で、苦しいものなのだ、と…。安吾の小説の女性達が凄惨の極みであっても、なぜか嫌悪しきれないのも、そこに究極の人間の自然があるからかもしれません。

  • 2018.03.31 Saturday
  • 22:18

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

スティーヴン・W・ホーキング『ホーキング、宇宙を語る ビックバンからブラックホールまで』林一訳

2018年3月14日のスティーヴン・ホーキング博士の死去のニュースは、物理学と全く無縁の生活をしている私にとっても動揺するニュースでした。最近では、エディ・レッドメインがアカデミー主演男優賞を受賞した映画「博士と彼女のセオリー」から、「車椅子の天才」スティーブン・ホーキング博士に興味をひかれた人も多かったのではないかと思います。

そのホーキング博士が、数式を使わず大衆に向けて書き、世界的大ベストセラーとなったのが『ホーキング、宇宙を語る ビックバンからブラックホールまで』。

 

 

大衆向けに書かれたとは言え、やはり難しい!専門用語への理解が足りないという問題以上に、物理学を専門としていない私(たち一般大衆)が、物理学に独特のかなり抽象的な思考回路で(宇宙を)考えていくことになれてないことからくる難しさを感じます。物理学的抽象度というのは、文系の評論の比ではないなあと改めて。そもそもの発想の生まれるプロセス自体にもいちいち驚きながら、なるほど!と読みすすめました。私自身がこういう思考回路の中で思考するタイプでないのが良く分かる読書体験でした(笑)

内容は、1987年の執筆当時のものですので、現在の研究はさらに進歩しているのだろうと思います。とはいえ、直接そういった研究に関わることのない私にとっては、この本によって、これまで触れることのなかった物理的思考回路が存在することと、その発想の意外さに触れることができたことそのものを大変面白く感じました。(ブラックホールとは…、私たちは秩序を無秩序に変換して生きている…etc.)科学者による最先端の研究というのは、その道の専門家でないと手も足もでないくらい、それぞれの分野にどんどん特化されているということなのでしょう。

  • 2018.03.24 Saturday
  • 17:03

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

第158回芥川賞受賞作。題名から、宮沢賢治の「永訣の朝」に出てくる妹トシ像をイメージしてしまったので、全く別物の話で驚きでした。
63歳の若竹さんの描く75歳間近の桃子さん。彼女の心の最古層にある原初のイメージが東北弁で、東北弁で語ることが、彼女自身を汲み上げて顕わにしていくものという設定です。本心は東北弁によってのみ語られます。

 

 

一番の驚きは、セリフの「おらおらでひとりいぐも」が、賢治の詩の「一人で死んでいくと」いう意味でなかったところでしょうか。とは言いながら、桃子さんが到達していく境地が「全てのものが、まぶしくみな輝いている」ところなのだとしたら、それはある意味トシの達観した境地にも繋がるところがあって、やはり、題名は賢治の詩を彷彿とさせる「おらおらでひとりいぐも」である必要があったのでしょう。いわゆる老年を過ごす桃子さんが、まだ見ない世界へ独りで行こうとする心意気(!?)と、作者の実験的な書きぶりが、芥川賞選考委員の心を動かしたのかもしれません。

  • 2018.03.17 Saturday
  • 08:44

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

門井慶喜『銀河鉄道の父』

第158回直木賞受賞作。
宮沢賢治とその父…ということで、きっと親子の確執の話だと思って読み始めたら、なんと現代のイクメンに繋がるような親バカパパの話で驚きました。
もちろん、父子の「対立」は描かれるのですが、これまで「父とは相容れなかった賢治」という印象が強かったので、この時代設定で、ここまで息子を献身的に(偏)愛する父親であったことの方が衝撃的で、むしろ友好的な父子関係の印象ばかりが残りました。
きっと門井さんも、実際の父の意外なエピソードに行き当たり、書かずにはいられなかったということでしょうか。しかも、いわゆる「確執」の原因と言われている宗教的対立の部分も、実は…という展開で締めくくられていて、これまた驚かされました。

父子の交流の中で、宮沢賢治の文学性を含めた賢治像を描き出す、というよりは、賢治というのは材料に過ぎず、父子の関係性そのものを紡ぎ出すことに主眼がある作品と感じました。

 


文学的解釈という意味で、一番驚いたのは、妹トシの「永訣の朝」にからむ門井さんの解釈の部分でした。高校の教科書にも載っていてあまりにも有名な詩ですが、トシのセリフの部分を、作家としての賢治の創作開眼という視点で展開していたのはなかなかに面白く感じました。
ちょうど、「永訣の朝」のトシのセリフの一部「おらおらでひとりいぐも」が題となった作品が同時に芥川賞に選ばれているようです。次は芥川賞に手を伸ばしてみたいなと思っています。

  • 2018.03.10 Saturday
  • 19:45

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』

テレビドラマ「世にも奇妙な物語」のファンである朝井リョウさんが、映像化を夢見て勝手に原作を書き下ろしたという5つの短編集。

 

 

やはり、ウマイ!朝井リョウならではの"毒"が、「世にも奇妙な物語」的設定にピッタリはまっていて、どの短編も一筋縄ではいきません。しかも、毒だけでない、現実をしっかり写した書きっぷりも健在で、途中ウルっとこさせるところまで織り込むのが彼らしい心憎い演出。

映像化しても面白いのでしょうが、主眼はそこにはなくて、一見ドラマ的仮面を被りながら、実は現実生活に潜んでいる(当たり前になりすぎて気が付かない)奇妙さを描き出した小説だと感じました。もしかすると、現実のあなたはどうですか!?という問いがタイトルの「君」なのかもしれません。

そして、もしドラマ化するなら…、あえてモデルとなった俳優さんたちが分かるようにパロディ的に作られていた最後の短編の映像化をのぞみます。ぜひとも、ご本人方に出演して頂きたい(笑)

  • 2018.02.24 Saturday
  • 12:27

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

池田晶子『人生のほんとう』

中高生にも分かりやすく語りかけの文体で書かれた哲学入門書『14歳からの哲学』でも有名な池田晶子さん。『人生のほんとう』は、彼女のコミュニティ・カレッジの全6回の講義が収録されてた大人向けの哲学書。子ども向けの『14歳〜』では使えなかった、反語や逆接もふんだんに取り入れられていますが、「語り」の形式が取られているので、書き物を読むよりも分かりやすくなっています。

近代文学を専攻していた私自身は、近代小説の「自我」とか「個人性」といったものが哲学的思考に直結しているものと、安易に感じてしまっているところがあったのですが、池田さんの著作を読むと、哲学と文学は別物だとその根っこのところから覆えされます。いわゆるイメージとしての哲学を破壊するところからの出発で、日常で全く思いも寄らない(哲学的)考え方に浸っていく面白さを味わえます。

 

 

「普通に『人生』と呼ばれているものが何なのか、それを哲学的に考えるという話ですので、個人的な人生観ではないし、ましてや現世的処世訓でもない」(あとがきより)

 

詳細は、『人生のほんとう』を読んでもらうしかないのですが、「謎を生きているという自覚」のもとに、ただそこに「ある」こと。(哲学的には「ない」と言うべきなのかもしれませんが)その「ある」ものをとらえようとする捉え方の違いで、哲学になったり、宗教になったり、文学になったりするのだろうなとも感じました。とすると、別物とは言いながら、「言葉」というものを介して思索していくと言う意味で、やはり、人文科学という共通項があるのだとも改めて感じました。

少なくとも、常々大事な選択を迫られた時に「ご縁」を最優先してきた私には、とても受け入れやすい哲学的「人生」論でした。

  • 2018.02.17 Saturday
  • 15:54

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

川上弘美『いとしい』&西加奈子『白いしるし』

裏表紙にそれぞれ、「傑作恋愛小説」「超全身恋愛小説」をウリにしていたので、私の中の川上弘美さんや西加奈子さんのイメージからは意外な感じがして、二人がどんな感じのいわゆる「恋愛小説」を書くのだろうかと興味をひかれて思わずチョイス。

読んでみてビックリしたのが、どちらも、“愛する人との出会いと別れの中で、大きな影響を与えながら通り過ぎていく人々との交流、そして自分探し“というプロットだったこと。とはいえ、作家それぞれの味わいが違うので、全く違う読後感。

 

 

まっとうな人間界ではありえない狐につままれたような川上ワールドは、不穏感を漂わせながらも、不思議と嫌な感じにさせない。大阪人的さばさばとした全力西ワールドは、結果的には精神面での体当たり恋愛なのだけれど、表現者でありつづけようとする主人公の強さが救いとなっていて喪失感は薄い。

それぞれのワールド炸裂で、どちらも楽しめましたが、「恋愛小説」の部分よりは、女性の成長小説の部分によりひかれました。浮かばれない結末にもかかわらず、ある種の爽快感すら漂う2冊。

  • 2018.02.10 Saturday
  • 20:37

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

原田マハ『キネマの神様』&金城一紀『映画篇』『対話篇』

〜映画がテーマになった本〜

 

★原田マハ『キネマの神様』。私世代には懐かしい映画のオンパレードで、映画評の部分だけでも読み応えがある、楽しみどころが満載の一冊。登場人物たちのそれぞれの再生の物語が、あふれる映画愛と共に描かれます。甘いばかりでないところが物語にリアリティを与えていて、良質の映画を観た後の幸福感につながる感情を呼び覚ましてくれます。とこかく、「ニュー・シネマ・パラダイス」が観たくなること間違いなしです(笑)

 

 

★映画絡みで、金城一紀『映画篇』も。メインとなる映画を中心におきながら、なくしたものを取り戻していく人たちを描いた短編〜中編の5作品。それぞれ独立した5作を結ぶ映画として「ローマの休日」が真ん中に据えられ、その他にもそれぞれの物語をつなぐ仕掛けがちょこちょこ散りばめられています。仕掛けに気付いていくのも楽しく、また、読み進めるごとに深みも出てきます。

 

★金城一紀『対話篇』再読。こちらは、「死」と「愛」が中心にある3作ですが、『映画篇』と続けて読むと、『対話篇』と『映画篇』も繋がっていたことに気付いて驚きます!読者サービスが好きな作家さんだなとつくづく…。2冊がそれぞれに補い合って、登場人物の解釈が重層的になる仕掛けなので、せっかくなら両方読むことをオススメしたい2冊です。

  • 2018.02.03 Saturday
  • 00:02