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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

中村文則『教団X』

『文筆系トークバラエティ ご本、出しときますね?』を読んで、以前から気になっていた中村文則さんの『教団X』にやっと手を出しました。中村文則さん、初読みです。

文庫600ページに、様々な要素が入り込み、登場人物たちそれぞれが背負っている(哲学的とも見える)信念のようなものが、これでもか、これでもか、というくらいに丁寧に描かれていきます。とにかく作者の書きたいことが全て書き尽くされていく、という感じで、ここまで書ききったら、作家としては気持ちがよいだろうなという印象でした!

物語で語られる、科学的思想や宗教的思想、そして、世界状況の分析などなど…、示唆に富んでいて、そこらを細かに丁寧に読んでいくと、600ページ以上の読み応えのある作品です。

 

 

物語の進んでいく方向、そして、彼らを動かしていく過去や思想などが、いわゆる世の中の暗部を抉り出していくようなものなので、一体この小説はどこに向かっていくのだろう…と思いながら読み進めていきましたが、結末の着地点が、ままない世の中にあって、人間そのものを信じたい作者自身の希望を見るようで、救われたような気になりました。

最後に語る人物も、それまでの登場人物たちへのスポットの当たり方でいえば意外でありながら、いや、やはりこの物語の全てを背負いきるには、この人でなければならなかったのだな…と妙に納得させられました。

  • 2020.07.05 Sunday
  • 22:13

句集を作ろう!コンテスト

句集を作ろう!コンテスト 募集開始

小学生と中学生を対象とする句集を作ろう!コンテスト。2020年度の募集が開始しました。

 

句集を作ろう!コンテスト募集要項

 

前回との変更点としましては

40句部門と、20句部門のどちらか片方の部門にのみの応募になりました。

(両部門にご応募の場合は、40句部門を優先して受け付けます。)

学校賞は40句部門・20句部門を問いません。

 

9月末日が締め切りです。個人応募はもちろん、学校からの応募もお待ちしております。

 

審査員は、

三浦和尚(愛媛大学副学長)
小西昭夫(俳人)
堀田優子(元小学校校長)
キム・チャンヒ(デザイナー:装丁賞のみ)、他

 

専用の応募冊子を使っての応募となります。

2020年ならではの句集を完成させてみませんか!

 

昨年の結果はこちら!(クリック)

 

  • 2020.07.04 Saturday
  • 21:54

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

西加奈子『ふる』

主人公は、自分の願望を考えることなどなく、人を安心させて見くびらせる何かがあると自認し、自分が誰なのかを見つけられずにいる「池井戸花しす」です。彼女が「新田人生」という名を持つ7人の男たちと出会いながら、「自分はなんて、なんてたくさんの人と、関わってきたのだろう」と気づき、それぞれの人が「その人の人生を生きている」「奇跡」に思い当たるまでの物語です。

 

 

花しすが出会う「新田人生」とは、一人一人が新たな人生を持っているという隠喩なのでしょうか。子どもから大人まで、年齢も職業もバラバラの「新田人生」とのエピソードごとに、一つずつ花しすにふってくる文字も象徴的で、やわらかな温かさを持つ言葉ばかりです。

あんしん・わらって!・おいしいよ!・こうふく・かんぱい!・せいこう・はじめまして!・しゅくふく

また、花しすは、全ての人の体のどこかにくっついている「正体が分からない」白くて、ふわふわしているものを見ながら生きているのですが、「得体のしれぬ」ふわふわが何なのか、なかなか種明かしはありません。しかし、そのふわふわが女性器から生まれたものであり、花しすが「母の子ども」である自分を受け入れて、皆が「誰かの子ども」であると認めていった時、読者である私自身も、全ての人々がふわふわの祝福をまとって生れ落ちた存在なのだと納得させられた気がしました。花しすは、全ての人々に授けられた「祝福」を白いふわふわとして目にしていたということなのでしょう。

AVへのモザイクがけという花しすの職業もふくめて、女性の象徴としての女性器を切り口としながら、そこから生まれてくるすべての人間存在への讃歌のように感じました。もしかすると、祝福された確かな人生を手に入れた花しすも、また、私たち読者も、皆誰かの「新田人生」であるのかもしれません。

  • 2020.06.21 Sunday
  • 14:55

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

小池真理子『恋』

前回の『二重生活』に引き続いて、小池真理子さんの第114回直木賞の受賞作品『恋』です。

タイトルだけを見ると、所謂恋愛小説なのかな…と想像しましたが、これが一筋縄ではいかない様々な「恋」が入り混じった作品で驚きました。描かれた「恋」の形は様々で、しかもどれもが普通に「恋」という文字面から想像するタイプの「恋」とはかけ離れたもので驚かされました。

 

 

裏表紙には、

 

1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事件の蔭で、一人の女が引き起こした発砲事件。当時学生だった布美子は、大学助教授・片瀬と妻の雛子との奔放な結びつきに惹かれ、倒錯した関係に陥っていく。が、一人の青年の出現によって生じた軋みが三人の微妙な均衡に悲劇をもたらした…。全編を覆う官能と虚無感。その奥底に漂う静謐な熱情を綴り、小池文学の頂点を極めた直木賞受賞作。

 

とあります。

冒頭で主人公布美子の行く末が語られているにも関わらず、最後の最後まで先が読めまないミステリーとなっています。とにかく、一つ一つが用意周到に積み重ねられ、結末まで組み立てられているので、ネタバレの観点からは、上の解説以上の内容については全く語れません。もちろん話の筋の面白さの魅力もあるのですが、そこに悲しい人間の性が驚きの展開の中で描き出されていき、先へ進めば進むほど退廃的な空気感をまとった純文学的読みごたえが加わっていって飽きさせません。

何か(誰か)をひたすらに恋う心が、幾重にも描かれた作品なので、これまで一途に思いをかけたことのある人(かけたいと願う人)であれば、何かしら立ち止まらずにいられない、思わず読み続けさせられてしまう、そんな作品でした。

  • 2020.06.06 Saturday
  • 22:04

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

小池真理子『二重生活』

門脇麦×長谷川博己×リリー・フランキー×菅田将暉の豪華俳優陣共演の映画『二重生活』は、哲学科の大学院生珠(たま)が、担当教授のすすめから「哲学的尾行」を実践して、人間の実存についての論文を書き上げるまでの物語です。好みの俳優さんばかりで興味深く観、また、登場人物としては、リリー・フランキーさん演じる教授に興味を持ちました。そこで、原作では教授がどのような人物として描かれているのか、映画だけでは消化しきれなかった部分を埋めたい衝動にかられ、原作本を手に取りました。

これまでも、映画→原作本という流れで出会う作品は多かったのですが、ここまで原作とかけ離れた映画に出会ったのは初めてで驚きました。唯一、珠に尾行される近所の既婚男性石坂のみが、原作と映画での描かれ方にそれほどの違和感はなかったものの、その他の登場人物は、名前が同じであるだけで、背負っている人生が異なった別人でした。微妙にエッセンスが似ているので、一見同じように見えなくもないのですが、小池真理子さんが意図していたであろう人物像とは、ことごとく別人として切り取られている印象でした。

 

 

まず、主人公珠の専攻は仏文学で、また、彼女に論文を仕上げる必要にもかられてはいません。また、何より恋人との絡みも含めた彼女の背負っている物語が全く異なっています。物語の核となる「尾行」に至る経緯も、教授の講義や人物からの影響はあるものの、自然発生的に珠自らが能動的に開始した「文学的・哲学的尾行」で、目的を持たない「自分自身から解き放たれる」だけのものです。映画でも、「尾行」を「理由のない尾行」と定義してはいるものの、最終的に論文を書くという目的が発生している時点で、原作で描こうとしていた「尾行」の理論は破綻してしまっているように感じました。

また、映画で個人的に興味のあった教授についての知りたい部分の答え合わせ的な記述は何もなく、映画で重要な役割を占めていた教授の物語は、全くの映画のみの設定だと分かりました。つまり、映画で描きたかったものと、原作で描いていたものはやはり別のものであった訳で、結末の差異云々を超えて、もうテーマが異なっているので、それぞれ別物として味わうしかない、という結論に達した読書体験でした。

背徳や秘密に焦点をあてた「二重生活」を描いた映画としてのテーマも嫌いではありませんでしたが、虚無を抱えて日常を生きる一女性の、自己解放の手段としての「尾行」という「二重生活」を得た現実の方に、より信ぴょう性を感じました。

  • 2020.05.24 Sunday
  • 11:59