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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

第158回芥川賞受賞作。題名から、宮沢賢治の「永訣の朝」に出てくる妹トシ像をイメージしてしまったので、全く別物の話で驚きでした。
63歳の若竹さんの描く75歳間近の桃子さん。彼女の心の最古層にある原初のイメージが東北弁で、東北弁で語ることが、彼女自身を汲み上げて顕わにしていくものという設定です。本心は東北弁によってのみ語られます。

 

 

一番の驚きは、セリフの「おらおらでひとりいぐも」が、賢治の詩の「一人で死んでいくと」いう意味でなかったところでしょうか。とは言いながら、桃子さんが到達していく境地が「全てのものが、まぶしくみな輝いている」ところなのだとしたら、それはある意味トシの達観した境地にも繋がるところがあって、やはり、題名は賢治の詩を彷彿とさせる「おらおらでひとりいぐも」である必要があったのでしょう。いわゆる老年を過ごす桃子さんが、まだ見ない世界へ独りで行こうとする心意気(!?)と、作者の実験的な書きぶりが、芥川賞選考委員の心を動かしたのかもしれません。

  • 2018.03.17 Saturday
  • 08:44

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

門井慶喜『銀河鉄道の父』

第158回直木賞受賞作。
宮沢賢治とその父…ということで、きっと親子の確執の話だと思って読み始めたら、なんと現代のイクメンに繋がるような親バカパパの話で驚きました。
もちろん、父子の「対立」は描かれるのですが、これまで「父とは相容れなかった賢治」という印象が強かったので、この時代設定で、ここまで息子を献身的に(偏)愛する父親であったことの方が衝撃的で、むしろ友好的な父子関係の印象ばかりが残りました。
きっと門井さんも、実際の父の意外なエピソードに行き当たり、書かずにはいられなかったということでしょうか。しかも、いわゆる「確執」の原因と言われている宗教的対立の部分も、実は…という展開で締めくくられていて、これまた驚かされました。

父子の交流の中で、宮沢賢治の文学性を含めた賢治像を描き出す、というよりは、賢治というのは材料に過ぎず、父子の関係性そのものを紡ぎ出すことに主眼がある作品と感じました。

 


文学的解釈という意味で、一番驚いたのは、妹トシの「永訣の朝」にからむ門井さんの解釈の部分でした。高校の教科書にも載っていてあまりにも有名な詩ですが、トシのセリフの部分を、作家としての賢治の創作開眼という視点で展開していたのはなかなかに面白く感じました。
ちょうど、「永訣の朝」のトシのセリフの一部「おらおらでひとりいぐも」が題となった作品が同時に芥川賞に選ばれているようです。次は芥川賞に手を伸ばしてみたいなと思っています。

  • 2018.03.10 Saturday
  • 19:45

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』

テレビドラマ「世にも奇妙な物語」のファンである朝井リョウさんが、映像化を夢見て勝手に原作を書き下ろしたという5つの短編集。

 

 

やはり、ウマイ!朝井リョウならではの"毒"が、「世にも奇妙な物語」的設定にピッタリはまっていて、どの短編も一筋縄ではいきません。しかも、毒だけでない、現実をしっかり写した書きっぷりも健在で、途中ウルっとこさせるところまで織り込むのが彼らしい心憎い演出。

映像化しても面白いのでしょうが、主眼はそこにはなくて、一見ドラマ的仮面を被りながら、実は現実生活に潜んでいる(当たり前になりすぎて気が付かない)奇妙さを描き出した小説だと感じました。もしかすると、現実のあなたはどうですか!?という問いがタイトルの「君」なのかもしれません。

そして、もしドラマ化するなら…、あえてモデルとなった俳優さんたちが分かるようにパロディ的に作られていた最後の短編の映像化をのぞみます。ぜひとも、ご本人方に出演して頂きたい(笑)

  • 2018.02.24 Saturday
  • 12:27

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

池田晶子『人生のほんとう』

中高生にも分かりやすく語りかけの文体で書かれた哲学入門書『14歳からの哲学』でも有名な池田晶子さん。『人生のほんとう』は、彼女のコミュニティ・カレッジの全6回の講義が収録されてた大人向けの哲学書。子ども向けの『14歳〜』では使えなかった、反語や逆接もふんだんに取り入れられていますが、「語り」の形式が取られているので、書き物を読むよりも分かりやすくなっています。

近代文学を専攻していた私自身は、近代小説の「自我」とか「個人性」といったものが哲学的思考に直結しているものと、安易に感じてしまっているところがあったのですが、池田さんの著作を読むと、哲学と文学は別物だとその根っこのところから覆えされます。いわゆるイメージとしての哲学を破壊するところからの出発で、日常で全く思いも寄らない(哲学的)考え方に浸っていく面白さを味わえます。

 

 

「普通に『人生』と呼ばれているものが何なのか、それを哲学的に考えるという話ですので、個人的な人生観ではないし、ましてや現世的処世訓でもない」(あとがきより)

 

詳細は、『人生のほんとう』を読んでもらうしかないのですが、「謎を生きているという自覚」のもとに、ただそこに「ある」こと。(哲学的には「ない」と言うべきなのかもしれませんが)その「ある」ものをとらえようとする捉え方の違いで、哲学になったり、宗教になったり、文学になったりするのだろうなとも感じました。とすると、別物とは言いながら、「言葉」というものを介して思索していくと言う意味で、やはり、人文科学という共通項があるのだとも改めて感じました。

少なくとも、常々大事な選択を迫られた時に「ご縁」を最優先してきた私には、とても受け入れやすい哲学的「人生」論でした。

  • 2018.02.17 Saturday
  • 15:54

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

川上弘美『いとしい』&西加奈子『白いしるし』

裏表紙にそれぞれ、「傑作恋愛小説」「超全身恋愛小説」をウリにしていたので、私の中の川上弘美さんや西加奈子さんのイメージからは意外な感じがして、二人がどんな感じのいわゆる「恋愛小説」を書くのだろうかと興味をひかれて思わずチョイス。

読んでみてビックリしたのが、どちらも、“愛する人との出会いと別れの中で、大きな影響を与えながら通り過ぎていく人々との交流、そして自分探し“というプロットだったこと。とはいえ、作家それぞれの味わいが違うので、全く違う読後感。

 

 

まっとうな人間界ではありえない狐につままれたような川上ワールドは、不穏感を漂わせながらも、不思議と嫌な感じにさせない。大阪人的さばさばとした全力西ワールドは、結果的には精神面での体当たり恋愛なのだけれど、表現者でありつづけようとする主人公の強さが救いとなっていて喪失感は薄い。

それぞれのワールド炸裂で、どちらも楽しめましたが、「恋愛小説」の部分よりは、女性の成長小説の部分によりひかれました。浮かばれない結末にもかかわらず、ある種の爽快感すら漂う2冊。

  • 2018.02.10 Saturday
  • 20:37

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

原田マハ『キネマの神様』&金城一紀『映画篇』『対話篇』

〜映画がテーマになった本〜

 

★原田マハ『キネマの神様』。私世代には懐かしい映画のオンパレードで、映画評の部分だけでも読み応えがある、楽しみどころが満載の一冊。登場人物たちのそれぞれの再生の物語が、あふれる映画愛と共に描かれます。甘いばかりでないところが物語にリアリティを与えていて、良質の映画を観た後の幸福感につながる感情を呼び覚ましてくれます。とこかく、「ニュー・シネマ・パラダイス」が観たくなること間違いなしです(笑)

 

 

★映画絡みで、金城一紀『映画篇』も。メインとなる映画を中心におきながら、なくしたものを取り戻していく人たちを描いた短編〜中編の5作品。それぞれ独立した5作を結ぶ映画として「ローマの休日」が真ん中に据えられ、その他にもそれぞれの物語をつなぐ仕掛けがちょこちょこ散りばめられています。仕掛けに気付いていくのも楽しく、また、読み進めるごとに深みも出てきます。

 

★金城一紀『対話篇』再読。こちらは、「死」と「愛」が中心にある3作ですが、『映画篇』と続けて読むと、『対話篇』と『映画篇』も繋がっていたことに気付いて驚きます!読者サービスが好きな作家さんだなとつくづく…。2冊がそれぞれに補い合って、登場人物の解釈が重層的になる仕掛けなので、せっかくなら両方読むことをオススメしたい2冊です。

  • 2018.02.03 Saturday
  • 00:02

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

吉田修一『怒り』『小説「怒り」と映画「怒り」吉田修一の世界』

世の中の理不尽さに翻弄される人間を描くのがうまい吉田修一さん。人間の感情そのものが題名になった『怒り』は、映画化もされています。
映画は、オールキャストの名演のオンパレードで、それぞれの役が埋もれることなく印象的なシーンと共に記憶に残りましたが、(個人的には、広瀬すずさんのイメージを打ち破る女優っぷりに度肝を抜かれたのですが、)各キャストが演技で語っていた登場人物たちが、小説ではどう描かれているのか、興味津々で読みはじめました。

 

 

題名から、怒りという外に向かっていく破壊的な強い感情がメインなのかなと思いきや、それ以上に、相手を信じたいが故の人間の疑心暗鬼が、さらなる悪循環を生み出していく作品でした。エゴが、相手をそして自分を不幸にしてしまう様々の形と、それでも相手を信じずにはいられない人々。結局は、外へ吐き出して終わるような怒りだけではない、自分自身へも向かっていく怒りまでが描かれていて、人間のどうしようもない性に悲しみが募り切なくなりました。
映画ファンも楽しめる『小説「怒り」と映画「怒り」吉田修一の世界』には、スピンオフ的に、犯人に対する八つの証言も収録されています。これで犯人が見えてくるかと思いきや、証言が重なっていくほど余計に、体系的に言語でまとめられない人物になっていく感じでした。この犯人は、狂気や闇を抱えた一人の人間と言うよりは、日常に存在していて何かの拍子で私たちを脅かす可能性のあるものの象徴なのではないかとも感じられてきました。そんな存在にいつ巻き込まれるのかも分からない現実…。もしかすると、怒りという感情を持つ私たちも、脅かす側になってしまうのかもしれません…。

  • 2018.01.27 Saturday
  • 11:08

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

朝井リョウ『武道館』『ままならないから私とあなた』

年甲斐もなく最近夢中になっている作家が朝井リョウさん。デビュー作『桐島、部活やめるってよ』からひきつけられっぱなしで、彼の作品は、どんなジャンルでも驚きが用意されていて面白く、しかも、朝井リョウ色はちゃんと根底に流れているので、毎回うならされます。話の筋云々以上に、話の紡ぎ方に魅力を感じる作家です。

 

 

★『武道館』−アイドルという矛盾を抱えた存在を描き出していく中で、世の中に存在し続ける悪意や、いつでも加害者になり得る無自覚な大衆を浮き彫りにしていきます。やはり、単純なアイドル小説ではなかった!また、人が幸せになることとは、そして、人が選びとりたいものとは…が問われる小説でもありました。救いある読後感が、読者の背中をも押してくれます。

 

★『ままならないから私とあなた』再読。これは、初読の時に、その才能にノックアウトされた作品でしたが、やはり面白い!同時収録の「レンタル世界」も設定だけでない驚きに満ちた展開の作品。両作品共に、「ままならない」世の中で生きている私たちであるという真実が、作者ならではの切り口で描き出されます。では、そんな世の中を私たちはどう生きていくのか…。軽快な書きぶりでありながら、重厚な純文学を読んだ読後感。やはり朝井リョウはスゴイ!

 

(ただのファンレターのようになってしまいました@笑)

  • 2018.01.20 Saturday
  • 15:10

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

辻井いつ子『今日の風、なに色?』『のぶカンタービレ!』

昨年末に松山でも開かれた「辻井伸行 音楽と絵画コンサート」。驚きの音に震えましたが、個人的には、ハンディの中で才能を開かせてた辻井さんをサポートしてきたであろうご両親のことが気になって仕方がなく、自分は親として子どもに何かできたのか…と自問、反省させられたリサイタルともなりました。

 

 

ということで、辻井伸行さんの母、辻井いつ子さんの、誕生〜親や師から巣立つ19歳までの記録本を手に取りました。

本当なら人には隠しておきたいだろう母としての悩みも、日記をそのままに載せるなど包み隠すところがなく、きれい事だけでない現実がストレートに読者に届けられます。最終的にいつ子さんは、

「私のなかで伸行が『見えない』ということは、少なくとも芸術や美の鑑賞においては関係なくなりました。その点では『かわいそう』とも思いません。(略)美の現場において伸行はしっかりと聴覚や触覚、そして心でそれを味わうことができるのです」

という境地にまで。そこにたどり着くまでのいつ子さんの明るさと全力ぶりに、親としての感情が揺すぶられます。プロのピアニストが誕生するまでのキセキに、思わずいつ子さんの感情に寄り添って一緒に涙してしまう書。

  • 2018.01.13 Saturday
  • 12:28

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

漱石・太宰 関連本

2018年より、nhkkのブログにも備忘録的本の感想を投稿することにしました。

これまで私個人のSNSで投稿していた流れのもので、かなり個人的な感想になっていますのでご了承ください。(nhkkの活動には関係のない内容ですが…。お時間の許す方はお付き合いください。)

※ 俳句関連書籍については、「俳句関連・書籍など 紹介」とカテゴリーを分けていますのでそちらをご覧ください。

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★夏目漱石「道草」−自伝的小説。養父母と義父からのお金の無心問題に、「がたぴしする」夫婦仲がリアルに描かれます。お金の問題以上に、どうしようもない夫と妻のズレが淡々と…。それにしても埋めようのない夫婦の距離…。男と女の考え方の違いが良く描かれ、永遠に交わることはないようで…、恐ろしいほど。

 

★夏目鏡子夫人述の「漱石の思い出」。文豪漱石でなく、生の人間漱石が語られ、漱石の神経衰弱のことなどよく分かる一冊。漱石の狂気を病気のせいと開き直って夫につくす鏡子さんに驚く…。「道草」で漱石が夫婦仲を好きなように書けたのも、結局は夫人に甘えていたのかもしれない…という気がしてきます。

 

 

★猪瀬直樹「ピカレスク太宰治評伝」。裏表紙には「井伏鱒二と太宰治の、人間としての素顔を赤裸々に描く傑作評伝ミステリー」と。読み進めながら、猪瀬直樹さんは、あまり太宰治と特に井伏鱒二がお好きではないのではないかと…。太宰の死の真相に思い至って書かれた本という印象で、こんなにも作家に対して挑戦的に書かれた評伝を始めて読みました。もちろん、謎解きの部分に、新発見や納得させられる部分はあったのですが、太宰ファンの私としては、やや悪意さえみえるくらいに感じてしまい…、そこがしんどかった…。

 

★津島美知子「回想の太宰治」。「ピカレスク」読了後の気分を切り替えたくて、再読、救われました。同じ出来事が描かれても、こちらは太宰への愛情から書かれた印象。生身の太宰を知っている、妻だからこそ書ける一冊で、本当に賢明な女性だったのだろうなとつくづく…。実際には妻としての悩みも多かったのでしょうが、その辺りには触れずに、夫である作家を淡々と描きつくし、作家太宰に惚れていた美知子さんが伝わる一冊。

  • 2018.01.05 Friday
  • 14:03