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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

斉藤美奈子『名作うしろ読み』

願わくは名作のオコボレを少しでも長く頂戴できますように。

 

鋭い論調でスカッと愉快になる文芸評論家・斉藤美奈子さんの本はどれも読んでも面白いのですが、『名作うしろ読み』は、本を読んでいなくても、名作の冒頭部分を知っている人は沢山いることの逆の発想からの一冊です。「名作は“お尻”を知っても面白い!」と銘打ち、「お尻がわかったくらいで興味が半減する本など、最初からたいした価値はないのである」と言ってのけ、名作132冊を最後の一文から読み解いていく文学案内です。お尻から入るので、本の内容も大変入ってきやすいのがこのスタイルの利点です。

読売新聞夕刊のコラムが元となっていることもあり、一冊の紹介は見開き2ページで読みやすい分量。しかも、読書案内の中に斎藤美奈子流の斬新な読みを呈示するという面白さです!

上の引用は文庫版のあとがきの最後の一文ですが、単行本版の最後の一文

 

評論のラストはとかく説教臭くなるのが問題なのだ。

 

とともに、自分の書さえもバッサバッサと切っていくような痛快ささえあります。おそらく、作品によっては、読者自身の読みと違って、アレッ? そうかな? と読者が同意できない案内があることも想定内で、むしろ、それを恐れずに、自分なりの振り切った読みを楽しんでもらうことに主眼をおいているのだろうなと感じました。

 

 

読売新聞の連載は続き、続編『名作うしろ読みプレミアム』がすでに単行本化されているようです。どう「プレミアム」なのか、こちらも興味津々です。

今回改めて読んでみたいな、と思った作品も多かったのですが、未読で特に心ひかれているのが、中上健次『紀州―木の国・根の国物語』。芥川賞受賞作の『岬』とともに読んでみたいと思っています。

とにかく、紹介された132冊が読みたくなること間違いなし!です。

  • 2018.06.02 Saturday
  • 00:28

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

南木佳士『ダイヤモンドダスト』

最近はまっている海外ドラマが「グッド・ドクター」(※注)です。wowowでアメリカ版「グッド・ドクター 名医の条件」が放映され始めたのをきっかけに(現在放映中)、韓国版の全編が見られるwowowオンデマンド放送に行き当たりどっぷり…。アメリカ版から入ったので、初めは韓国版の泥臭さが気になっていたのですが、見続けていると淡々としたアメリカ版よりもどんどん味が出てきて、すっかり韓国版ファンになってしまいました。
そんな中、医学ものが読みたくなり、第100回芥川賞受賞作、南木佳士『ダイヤモンドダスト』を。医師でありながら小説家でもある南木佳士さんならではの(医学)短編4作と、同じく医師と小説家の顔を持つ加賀乙彦さんとの興味深い対談で構成されています。やはり「ダイヤモンドダスト」がベストでした。
このところ、ドラマの視聴者の期待に添って進んで行くストーリー展開(これがドラマとしては面白いところなのですが)になじんでいたこともあり、むしろ、現実としてそこに「ある」死から目を背けることはできない臨床医でもある作家南木さんの姿勢を余計に感じてしまった読書体験でした。また、どの作品のどの登場人物も病気以外の満たされない何かを抱えていて、それがまた現実味を持った人間として浮かび上がってきます。設定も、結末も、決して明るい要素はないのですが、死への敬意というでもいったような静謐な何かが流れていて、南木さんにとって命とは、「ダイヤモンドダスト(大気中の水分が凍結してできた微細な光の粒)」そのものなのだろうと感じずにはいられませんでした。

 


おまけ…なんと、タイムリーにも今日、日本版「グッド・ドクター」が山 賢人主演でフジテレビ系7月期木曜ドラマとなることがネットで情報解禁されていて驚きました。日本版はどんな味わいになるのでしょう…。私自身は、基本的にオンデマンドでの海外ドラマ視聴が多く、日本のドラマは見ていないのですが、このタイミングなので見てしまうかもしれません(笑)

 

※注「グッド・ドクター」−天才的な能力を持つ、自閉症でサヴァン症候群の青年が困難を乗り越え、医師として成長していくヒューマンメディカルドラマ。2013年に韓国で作られ、2017年にはアメリカでフレディ・ハイモア主演でリメイク。

  • 2018.05.26 Saturday
  • 21:03

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

朝日新聞社/朝井リョウ『18きっぷ』&立花隆/東京大学『二十歳のころ』『二十歳の君へ』

ちょうど今、高校二年生の現代文の授業で中島敦の「山月記」をやっているところなのですが、生徒達自身にとっても、自分の思い煩いに触れる教材となるようです。教科書をじっくり読み終わったら、ぜひとも生徒達に紹介したいのが、同年代の手記です。

(本ブログ)前回のエッセイ集の中でも朝井リョウさんは、高校生のパワーや破壊力について「勝てる気がしない」と言っていましたが、『18きっぷ』は、そこから一歩踏み出そうとする、良い意味で畏れを知らない最後の(!?)年齢である18歳の46人のナマの声がポートレートと共に掲載されています。目指そうとする道も職業も様々…。誰一人かぶることがない「人生の選択」が、一人一人は熱く、しかし書籍としては淡々と46並べられています。巻末には、それぞれの一年後の今も掲載されていて、目指す道を突き進む者もいれば、別の道を見つけた者もいるという、社会に一歩踏み出した19歳の現実もそこにあります。

 

 

『二十歳のころ―立花ゼミ『調べて書く』共同製作」立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ』&『二十歳の君へ 16のインタビューと立花隆の特別講義』

『二十歳のころ』は、立花隆ゼミ&東大生だからこそ実現した企画で、大学生達が有名無名の68人に「二十歳のころ」をインタビューしてまとめたもので、有名人・学者・被爆者・元オウム信者・駐日大使など、とにかくあらゆる業種の人々が出てきます。個人的には、★加藤登紀子★秋山仁★佐藤学★立花隆★鶴見俊輔★野田秀樹★山藤章二★横尾忠則★吉川弘之★吉永良正(+長崎被爆者語り部の方々全員)を特に面白く、印象深く読みました。(書き手が学生なので、きっと担当学生の力量にもよるのでしょうが、)エンターテイナー的な立場から話をしてくれる人のインタビューがやはり面白いなと。

続編『二十歳の君へ』は、『二十歳のころ』の流れをくむ「インタビュー集」と「立花隆の特別講義」と「ゼミ生の手記」の三部構成。バラエティに富む人選と、書き手としての学生の成熟を感じさせるインタビューは、前回より面白く読ませましたが、やはり圧巻は「立花隆の特別講義」!!6時間分の講義は読み応えあがあり、とっくに二十歳の2倍を生きたオバサンの脳ミソも刺激されました。意外に(!?)面白くオススメなのが、思いわずらっている「ゼミ生の手記」。この手記も、「山月記」の後に使うのにピッタリです!

  • 2018.05.20 Sunday
  • 23:57

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』

エッセイ集第二弾!本ブログでも登場回数の多い朝井リョウさんは、個人的に今一番好きな作家で、(年甲斐もなく若い作家さんにこんなにも惚れ込むとは思っていなかったので自分でも驚いているのですが)著作はもちろん、(ネットで後追いですが)ラジオも聴いてしまっています(笑)
「読んで得るもの特にナシ!」と銘打った『風と共にゆとりぬ』ですが、ラジオ「朝井リョウ・加藤千恵のオールナイトニッポン0」(放送終了)や「高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと」でのトークを彷彿とさせる彼のナマの声が聞こえてきて、バカバカしく可笑しく楽しくも、朝井リョウ的毒をほどよく注入してもらえる一冊です。ラジオで語られたエピソードも、本という味付けの違いの妙を楽しめます。アエテ感漂うこの大仰な装丁にも遊び心が…(笑)

 

 

エッセイの前作『時をかけるゆとり(『学生時代にやらなくてもいい20のこと』に加筆)の続編もあったり、また、『ままならないから私とあなた』や『世にも奇妙な君物語』に関わる内容も出てきて、つい他の作品にも手をのばしてしまいたくなります。(エッセイやラジオで)彼の代名詞となっているお腹&お尻ネタも長編「肛門記」として結実。また、三部に分かれた二部「プロムナード」が日本経済新聞に半年間連載されたコラム集で、作家として意識的に構成された章となっていて、エッセイでもまた別の趣があり、硬軟両方を楽しめるのも魅力です。
 

  • 2018.05.12 Saturday
  • 10:43

俳句関連・書籍など 紹介

寺山修司『寺山修司の俳句入門』

「短歌・詩・小説・エッセイ・シナリオ・演劇・映画・写真から競馬、ボクシング評論まで、多彩な分野で時代をリードし、四十七年という<持ち時間>を駆け抜けていった寺山修司。この多面的、多層性の表現者の出発が俳句であったことは今ではよく知られている。」

「解題 寺山節考−入門から出門へ」齋藤愼爾 より

 

事務所の書庫で見つけた本書。寺山修司ファンの一人として、彼がどんな入門書を書いたのだろう…と気になり思わず手に取りました。

結論から言うと…、初心者向けに作られた、実用的な俳句の入門書ではありませんでした(笑)寺山修司没後に編まれたもので、評論的な内容がメインで、「寺山俳句を知るための入門書(齋藤愼爾)」というのが一番正しい題名の解釈と言えそうでした。入門書だと思って入ったので、まず本書に慣れるのに随分苦戦してしまいました(笑)

 

 

彼の活動のスタートを彩る俳句との数年は、主に高校時代に当たるのですが、彼が興した十代の全国俳句誌「牧羊神」にからむ座談会や、句会の記録などなど、どれを読んでもその成熟ぶりに驚きます。「私ら新世代によって革命化された新理想詩」としての俳句を目指していて、俳句もひりひりとした若さに溢れています。

 

流すべき流灯われの胸照らす

便所より青空見えて啄木忌

詩人死して舞台は閉じぬ冬の鼻

秋風やひとさし指は誰の墓

法医學・櫻・暗黒・父・自瀆

 

個人的には、彼が俳句をやめたずっと後に、俳句雑誌に依頼されて書いた文章やインタビューなどが、俳句との距離感もあり面白く、より示唆に富んでいるように感じました。日本の近代以降の文学における「私」性の問題なども、寺山修司流に昇華されていき、彼が俳句や短歌をやめた後に演劇だったのも納得できた気がしました。寺山修司は演劇を、肉体そのものが投げ出される「一人の作者の『私の呪縛』などと無縁のもの」であり、「社会科学を挑発する表現形式」として選び取ったのでしょう。

 

もともと「自分」というのは一つの連続体だっていうふうに思っていないですからね。昨日の自分と今日の自分とが同じだという意識はぜんぜん持てない。それらをつないでいるのは言説の次元のことにすぎないのであって、昨日の自分は「他人」の比喩です。

インタビュー「俳句、その出会いとわかれ」より

  • 2018.05.04 Friday
  • 14:15