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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

西加奈子『ふる』

主人公は、自分の願望を考えることなどなく、人を安心させて見くびらせる何かがあると自認し、自分が誰なのかを見つけられずにいる「池井戸花しす」です。彼女が「新田人生」という名を持つ7人の男たちと出会いながら、「自分はなんて、なんてたくさんの人と、関わってきたのだろう」と気づき、それぞれの人が「その人の人生を生きている」「奇跡」に思い当たるまでの物語です。

 

 

花しすが出会う「新田人生」とは、一人一人が新たな人生を持っているという隠喩なのでしょうか。子どもから大人まで、年齢も職業もバラバラの「新田人生」とのエピソードごとに、一つずつ花しすにふってくる文字も象徴的で、やわらかな温かさを持つ言葉ばかりです。

あんしん・わらって!・おいしいよ!・こうふく・かんぱい!・せいこう・はじめまして!・しゅくふく

また、花しすは、全ての人の体のどこかにくっついている「正体が分からない」白くて、ふわふわしているものを見ながら生きているのですが、「得体のしれぬ」ふわふわが何なのか、なかなか種明かしはありません。しかし、そのふわふわが女性器から生まれたものであり、花しすが「母の子ども」である自分を受け入れて、皆が「誰かの子ども」であると認めていった時、読者である私自身も、全ての人々がふわふわの祝福をまとって生れ落ちた存在なのだと納得させられた気がしました。花しすは、全ての人々に授けられた「祝福」を白いふわふわとして目にしていたということなのでしょう。

AVへのモザイクがけという花しすの職業もふくめて、女性の象徴としての女性器を切り口としながら、そこから生まれてくるすべての人間存在への讃歌のように感じました。もしかすると、祝福された確かな人生を手に入れた花しすも、また、私たち読者も、皆誰かの「新田人生」であるのかもしれません。

  • 2020.06.21 Sunday
  • 14:55

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