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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

又吉直樹『劇場』

本来ならば、昨日4月17日が公開予定だった、山賢人×松岡茉優×行定勲監督「劇場」の原作本ですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、映画も延期されたようです。まさに非常事態…で、一日も早い収束を(当初は安易に使っていた終息の文字が、使えない状態になってきました)願う日々です。まずは、私自身もStay Homeから…。日本中が心を一つに、なんとか乗り切っていきたいです。

さて、又吉直樹さんと言えば、芥川賞を受賞した『火花』が、とにかく人間が好きな方なんだろうなぁ〜との印象で、また、泥臭さも感じさせる真面目ぶりの中で、ホロリとさせたりもして、一気に読まされました。彼の恋愛小説ということで、どんな作品なんだろうと興味津々で手に取りました。

スミマセン、以下ネタバレありです。(もしかすると映画と原作では、二人の出会いが少し違っているかもしれませんが…)

 

 

「好きな仕事で生活がしたいなら、善人と思われようなんてことを望んではいけないのだ。恥を撒き散らして生きているのだから、みじめでいいのだ」という主人公永田は、前衛的な劇団「おろか」の脚本家であり演出家です。そんな彼が、沙希との出会いによって、恐怖の対象であった人間を尊いと思えるようになっていきます。排除するのではなく、取り込んで、受容することを知り、また、この瞬間に立ち会うために生まれてきたのかもしれないと思えるような瞬間を体験できるようになっていくのですが、その変化を沙希本人には見せられないのがもどかしくもあります。そして、そんな永田にとって「一番安全な場所」が、二人の恋愛の劇場である沙希の部屋です。

この「安全な場所」が最も「劇場」と化すのが、二人が呼吸していた部屋が死んでいく箱となっていくクライマックスです。部屋を照らす月と、猿の面をつけた永田は、二人の出会いとなった画廊に飾られていた、月の下歯を剥き出しにいて睨みつける猿の絵画そのものです。出会いの場面では、ガラス窓越しにその絵画を眺める側であった二人が、今は劇場の中で、演じる側としてそこにいるという現実も象徴的でした。

「演劇でできたことは現実でも再現できる可能性がある」という永田。これから、心動かされる瞬間を作り出す演劇を目指していくだろう永田流に解釈するならば、演劇を経由することができた二人の現実は、「現実に対抗し得る」演劇の力によって、二人それぞれにとって意味あるものになったのかもしれません。たとえそれがどのような結末であったとしても…。

 

又吉さん的なイメージの永田を、映画で山賢人さんがどう演じるのか…。映画の見どころの一つとなりそうです。世の中の平穏がもどってきたら…、とそれも楽しみに…。

  • 2020.04.18 Saturday
  • 18:36

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