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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

吉田修一『続横道世之介』

柴田錬三郎賞受賞作品で、2012年に映画化された『横道世之介』の続編です。前作では18〜19歳だった世之介の6年後、一年留年して大学を卒業したものの、バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつないでいる世之介の前に訪れてくる人々との一年間が描かれます。

 

 

『横道世之介』が、世之介と彼にかかわる人々のその後の挿話という二重構造になっていたのと同様に、24〜25歳の世之介と世之介を取り巻く人々と、27年後の2020年、東京オリンピック最中のその後の彼らの現在とが交錯していきます。

それにしても、世之介は変わらない。もちろん、モラトリアム期間の大学生とは違って、責任感を必要とする人間関係が表れてくるので、その中での世之介の成長はあります。しかし続編でも、「良い人そうに見えるが極端に頼りない」ままです。とはいえ、やはり「役に立たなくてもいいから、誰かそばにいてほしいとき」にいてほしい人であり、「ここからいくらでもスタートできるな」「きっと何もかもが良い方向に進んでいくはずだと思わせてくれる」人であり続けます。

 

 

前作で読者に突き付けられた、世之介のなんともやるせない結末が変わることはありませんし、そこに甘くない現実を見ることもできるのですが、続編で描かれた世之介にかかわった人々の27年後を思う時、「善良であることの奇跡」を体現した世之介の物語は、ある種、殺伐とした現代のメルヘンなのかもしれないなと感じました。

  • 2020.02.11 Tuesday
  • 19:00

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