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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

川上未映子 村上春樹『みみずくは黄昏に飛びたつ』

訊き手・川上未映子さん、語り手・村上春樹さんの『騎士団長殺し』をメインに据えた対談集です。

川上未映子さんは、少女時代から村上春樹さんの熱心な愛読者だったそうなのですが、愛読者の域を超えて、研究者のような緻密な読み込みと記憶力でインタビューが進められていきます。そして、そこに作家としての好奇心が上乗せされて訊き尽くされていくので、読者も一緒に過去の作品まで振り返りながら、興味深くまた面白く読むことのできるロングインタビューでした。

 

 

私自身が一番興味深かったのは、村上さんの創作で採用する言葉が、辞書的な意味で使用しているのではないというところでした。例として出されていたのが、『騎士団長殺し』の中に出てくる騎士団長の「私はイデアだ」や顔ながの「私はメタファーです」です。「イデア」も「メタファー」もふと出てきたから使っただけで、一般に考えられる「イデア」「メタファー」の意味で使っているのではないというのには驚きました。

「その言葉の持っているイメージの一部、ある意味での豊かさが必要」なだけで、「広い範囲の、磁力を持った何か」としての意味しかないそうで、村上さん自身も「僕にもよくわからない」とのこと。辞書的な意味で解釈し、意味づけて理解しようとする私には目からウロコでした。作者の前に現れ出てきたものをそのまま描いていく村上春樹作品は、読者の心に現れるままに読めばよいのだ、とふっと肩の力が抜け、『騎士団長殺し』の再読がより楽しみになりました。

その他にも。日常的な自我の葛藤を描かない創作姿勢や、よく例に出される地下二階のたとえ、そして、「善き物語」には力がある話などなど盛りだくさん。読んだ本の内容をすぐに忘れてしまう私としては、改めて村上春樹作品を読み直したくなる一冊でした。少なくとも国語総合の教科書に載っている「鏡」は、新しい作品へのアプローチ方法がありそうで、ぜひ扱ってみたいと思いました。

 

 

愛媛新聞で、毎週土曜日に6回にわたって掲載されていた”村上春樹さん特別インタビュー 小説家40年と「騎士団長殺し」”が、タイムリーにも本日で終了しました。『騎士団長殺し』が文庫化されたばかりのタイミングなので連載は想定内(!?)とは言え、ちょっと嬉しくなるシンクロニシティーでした。

  • 2019.06.29 Saturday
  • 15:07

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