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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

ハンス・ペーター・リヒター三部作「あのころはフリードリヒがいた」「ぼくたちもそこにいた」「若い兵士のとき」(上田真而子 訳)

中学の国語の教科書に「ベンチ」の章が採用されている「あのころはフリードリヒがいた」。ナチスのユダヤ人迫害の様子を、ドイツ人少年の目から、ユダヤ人少年フリードリヒの悲劇として描いた作品ですが、次男の学校では、岩波少年文庫が渡されたそうで、同じ年代の中学生として衝撃を受け、3部作全てが読みたくなった作品のようでした。

実際3部作をそろえようとすると、「フリードリヒ」以外の、続編「ぼくたち〜」と完結編「若い兵士〜」が絶版になっていて、なかなか手に入れられなかったのが想定外でした。3部作とは言いながら、それぞれ、本の内容も、描き方も、少しずつ違っていて、「フリードリヒ」が小説として読みやすかったのに対して、編を重ねる毎に、どんどんルポルタージュ的要素が強くなってくるのが特徴でした。

 

 

「ぼくたちもそこにいた」は、「フリードリヒ」を見ていたドイツ人少年自身の話です。ナチス・ドイツの青少年団「ヒトラー・ユーゲント」の現実が、淡々と書かれていて、読者は、ユダヤ人への加害者としてのドイツ人ではなく、ドイツ人少年たち自身も、戦争に翻弄された存在だった事実を突きつけられます。

「若い兵士のとき」はその少年が若い将校となった前線での三年間の体験で、こちらは、短くぶつ切れのように、事実だけが生々しく重ねられていきます。ドイツ人将校の綺麗事ではすまされない戦争での個人的体験を重ねていくことで、戦争そのものがもつ残虐さや、戦争が人を人でなくしていく様子が浮かび上がってきます。作者は、物理的にも心理的にも、破壊そのものでしかない戦争というテーマを描くために、筆致を変えていったのかもしれません。

  • 2019.05.04 Saturday
  • 17:44

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