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備忘録〜個人的・書籍の感想〜

吉田修一『怒り』『小説「怒り」と映画「怒り」吉田修一の世界』

世の中の理不尽さに翻弄される人間を描くのがうまい吉田修一さん。人間の感情そのものが題名になった『怒り』は、映画化もされています。
映画は、オールキャストの名演のオンパレードで、それぞれの役が埋もれることなく印象的なシーンと共に記憶に残りましたが、(個人的には、広瀬すずさんのイメージを打ち破る女優っぷりに度肝を抜かれたのですが、)各キャストが演技で語っていた登場人物たちが、小説ではどう描かれているのか、興味津々で読みはじめました。

 

 

題名から、怒りという外に向かっていく破壊的な強い感情がメインなのかなと思いきや、それ以上に、相手を信じたいが故の人間の疑心暗鬼が、さらなる悪循環を生み出していく作品でした。エゴが、相手をそして自分を不幸にしてしまう様々の形と、それでも相手を信じずにはいられない人々。結局は、外へ吐き出して終わるような怒りだけではない、自分自身へも向かっていく怒りまでが描かれていて、人間のどうしようもない性に悲しみが募り切なくなりました。
映画ファンも楽しめる『小説「怒り」と映画「怒り」吉田修一の世界』には、スピンオフ的に、犯人に対する八つの証言も収録されています。これで犯人が見えてくるかと思いきや、証言が重なっていくほど余計に、体系的に言語でまとめられない人物になっていく感じでした。この犯人は、狂気や闇を抱えた一人の人間と言うよりは、日常に存在していて何かの拍子で私たちを脅かす可能性のあるものの象徴なのではないかとも感じられてきました。そんな存在にいつ巻き込まれるのかも分からない現実…。もしかすると、怒りという感情を持つ私たちも、脅かす側になってしまうのかもしれません…。

  • 2018.01.27 Saturday
  • 11:08

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