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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

『あの日、君と Boys』『あの日、君とGirls』『いつか、君へ Boys』『いつか、君へ Girls』

集英社文庫創刊35周年を記念して編集された、どれも上質の短編集。大人ではなく、少年少女を描いているという点も、失われてしまった何かが散りばめられているようで、ひりひりした感情すら懐かしく、また、愛しさを抱かせられます。

元々は、朝井リョウさんの「ひからない蛍」狙いで『いつか、君へ Boys』と『短篇少年』に辿りついたのが出会いだったのですが、読んでみると「少年」たちを描いた作品群がなかなかに個性的で面白く、「少年」という限定された一時期に特化した作品を一気に読める点も新鮮だったところから、全編を読んでみたくなった小説集でした。

ちなみに、「ひからない蛍」は、坪田譲治文学賞『世界地図の下書き』の「三年前」の章となった作品で、すでに読んでいたものだったのですが、少年を描いたアンソロジーという発想から、児童養護施設を描いた「ひからない蛍」のテーマや主人公たちが生まれたことが分かると、改めて心が震えました。

 

 

その他に好きだった作品は、伊坂幸太郎「逆ソクラテス」、加藤千恵「haircut17」、中島京子「モーガン」、村山由佳「イエスタデイズ」、石田衣良「跳ぶ少年」、山崎ナオコーラ「正直な子ども」、米澤穂信「913」、島本理生「きよしこの夜」、中田永一「宗像君と万年筆事件」。どの短編も、切り口がそれぞれの作家さんらしく、楽しめました。

4冊は2017年に、前出の『短編少年』と、『短編少女』『短編学校』に再編成されています。

  • 2018.11.17 Saturday
  • 23:30

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

俵万智『愛する源氏物語』

第14回紫式部文学賞授賞作品。

『源氏物語』に関する本は数多く出されていますが、本書は、『源氏物語』に出てくる和歌を取り上げて、そこから物語や作中人物を詳らかにしていこうという趣向の一冊です。

俵万智さんと言えば、すでに与謝野晶子の『みだれ髪』の全首を、現代の五七五七七に詠み訳した圧巻の『チョコレート語訳 みだれ髪』でも有名ですが、『愛する源氏物語』も同じ方式で、和歌が現代の短歌に万智訳されています。

 

 

例えば、紫の上と光源氏の最後の相聞

おくと見るほどぞはかなきともすれば風にみだるる萩のうは露 紫の上

はかなさは私の命と似ています風に乱れる萩の上露 (万智訳)

ややもせば消えをあらそふ露の世におくれ先立つほど経ずもがな 光源氏

ともすればはかない露のような世にあなたに後れて生きたくはない(万智訳)

光源氏は、紫の上の気持ちよりも「力点が『残された自分』にある」と指摘したり、結局「出家を許されなかった紫の上は、もう死ぬことでしか光源氏から自由になれない」「死もまた一つの救い」などと展開されていき、和歌から登場人物たちを読み解こうとしている点が大変新鮮です。このような和歌はこのような心情から生まれる…と、和歌を中心に置くことで理解できてくる登場人物というのを興味深く読み進めていきました。

宇治十帖の、浮舟についても、彼女が薫と匂宮のどちらを思っていたか、が和歌から解き明かされていき、目からウロコの終着点でした。

ついつい重きをおかず、通り過ぎてしまっていた『源氏物語』の和歌ですが、会話よりも先にあった和歌の存在を思うとき、やはり、このアプローチは見過ごしにできないなと改めて感じました。歌人ならではの視点の和歌から浮かび上がる新しい『源氏物語』論でした。

  • 2018.11.03 Saturday
  • 12:08

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

西加奈子『炎上する君』

自分の居場所や行き場を見つけられず、人生にさまよっている人の8つの短編集。主人公達がさまよう場所が、現実社会ではなところに存在していて、いわゆるリアルな物語は展開されません。かといってファンタジーとも違っている…、このフワフワとしたリアルさといったらなんだろう…と思いながらの読書でした。全く異なった不思議世界が8つもそろうと、むしろそちらの方が本物なのでは…なんて思わせてしまうのが西加奈子さんなのかもしれません。

 

 

例えば表題作は、炎上するほどの熱をもって生きることなど到底できそうもなかった人が、実は自らも炎上するくらいの熱量を秘めている現実に行き当たる、そんな作品。8つともに、救いとも、希望ともいえるような、これからも続いていくだろうそれぞれ別の結末が用意されています。

人は皆、本当は逃避場所を必要としているのだけれども、それを後ろめたく思う必要はない、迷うときは迷い、進むときは進みなさい、と背中を押してくれるような独特の西ワールドです。

  • 2018.10.27 Saturday
  • 22:30

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

加藤千恵『ハッピー☆アイスクリーム』

加藤千恵さんの17歳の時のデビュー歌集『ハッピーアイスクリーム』のリミックス版とも言える一冊。オリジナルの短歌全てに加えて、自らの高校生の時の短歌を元にした高校生を主人公とした切ない青春小説5編を収録。

高校生の短歌…というと、いかにもありがちな恋の歌を想像するかもしれませんが、いえいえ、甘っちょろいとこで終わらないリアルなナマの女子高生がそこにあります。また、これを元にした短編も、これまた少しずつヒネりがきいていて、願い通りには進んで行かない現実を受け止めようとする等身大の高校生が浮かび上がってきます。もちろん、担当している高校生たちに紹介しました。

「ハッピーアイスクリーム」とは、「会話中、偶然同時に同じ言葉を言ってしまった時に言い合う言葉」で、早く言えたほうが勝ちとか、アイスをおごってもらえるとかというものです。まさに、短歌も小説も、どれも高校生が「ハッピーアイスクリーム」と思わず口ずさんでしまうような高校生「アルアル」感でしめられた一冊でした。

 

 

重要と書かれた文字を写していく なぜ重要かわからないまま

傷ついたほうが偉いと思ってる人はあっちへ行って下さい

泣きそうになるのは誰のせいでもなく時おり強い風が吹くから

カラオケに行ったしコーラも飲んだけどやっぱりさみしいもんはさみしい

「燃やすとき公害になる」補聴器の電池を抜いた入棺のとき

走ってるつもりだったけどもしかしたら走らされてるのかもしれない

いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いてる気がする

夕立が街ごと洗い流すのをどこかで待っていたのだと思う

永遠に醒めない夢はそれはもう夢ではなくてべつの何かだ

いつだって見えないものに覆われて知らないものに守られている

  • 2018.10.20 Saturday
  • 13:56

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

村田沙耶香『殺人出産』

前回好い出会いをさせてもらったので、引き続き村田沙耶香さんを。

思いもよらない…。これは近未来の日本なのでしょうか…。

人が人工授精でしか子供を産まなくなってしまった時代。偶発的な出産がなくなったことで、人口が減り、恋愛や結婚とは別に命を生み出す自然なシステムが必要となり、そこで作り出されたのが、10人産んだら1人殺しても良いという「殺人出産制度」。殺人の意味が大きく変わり、それを行う人が「産み人」として崇められる世の中です。一方、「産み人」としての正しい手続きを取らずに殺人を犯す(命を奪う)と、「産刑」といって、男性も人工子宮を埋め込まれて、一生牢獄の中で命を産み続ける刑に処せられます。そして、「産み人」に殺される「死に人」は、皆のために犠牲になった素晴らしい人として送り出される…。未来の命をつなぐのが、殺意であるという驚きのスト-リーでした。

 

 

「産み人」として10人目の出産を迎えようとしている主人公育子の姉・環。姉自身も「産み人」から産まれているので、育子とは血が繋がりません。もちろん、他の産み人や死に人たちも話に絡んでくるのですが、さて、姉が抱いている殺意とは…。そして、象徴的な名を持つ育子の選択する道とは…。命短いものの代名詞でもある「蟬」の使い方も絶妙で…。何が正しいのか間違っているのか…すっかり村田沙耶香ワールドに取り込まれてしまいます。殺人を真ん中に据えながら、おどろおどろしさを感じさせないのも驚きでした。

その他の3つの短編も、どれも想像を超えた驚きの設定!朝井リョウさんなどの作家仲間が、村田沙耶香さんのことを、愛をこめて「クレイジー沙耶香」と呼んでいる理由の一つに触れられた気がしました(笑)

  • 2018.10.06 Saturday
  • 14:38

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

村田沙耶香『コンビニ人間』

第155回芥川賞作品の文庫化。

驚きました! 新しいものに出会えた喜び、という意味では(常に驚かされ続けている朝井リョウさんの作品をのぞけば、)西加奈子さんの『サラバ!』以来の衝撃度で、私のどストライクの作品でした!

 

 

社会が求めている「普通」とは? 幼い頃から「自分は何かを修正しなくてはならない」「治らなくては」ならない人間だと自覚している主人公古倉恵子。いわゆる「普通」からはみ出した自分を自覚しながら、「『普通の人間』の定型」に気付いていく主人公の目線は、無意識に社会不適合者をはじき出しそうとする「普通」の人間たちが、いかに乱暴でマニュアル的であるかをあぶり出していきます。

一体何が正常なのか…。そして、結局は一番見えていて、一番考えている主人公…。そこに関わってくるコンビニという存在…。コンビニについては、ネタバレになるので作品を読んでもらうしかないのですが、「普通」と私たちが信じている社会の隠された矛盾をつきながら、読者それぞれが問いかけられているような作品でした。本当に面白かった!

  • 2018.09.29 Saturday
  • 16:10

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

よしもとばなな『サーカスナイト』

2013年の新聞連載時は、毎日楽しみに読んでいました。秋山花さんのイラストも魅力的で、イラストの全てが書籍の挿絵にはならないだろうなと思うと捨てられなくて、結局209回の連載をとっておいた作品でもありました。

再読してみて、毎日新聞で少しずつ読んでいくのと、作品として通して読むのとでは、それぞれのエピソードの重さ加減が違っているなあ…とその印象の違いに驚きました。(詳細を忘れていただけ…という話もありますが…笑)そういう意味では、二度別の楽しみ方ができるのが新聞小説なのかも…と改めて感じました。

 

 

よしもとばななさんと言えば、「死」とか「この世の神秘」といったものが、日常の中にすっと書き込まれるのが特徴的な作家さんという印象なのですが、『サーカスナイト』も、主人公さやかの周りにある数々の「死」や、さやか自身の持つ物の記憶を読み取るサイコメトラー的能力などなど、まさによしもとばななさんらしい一冊となっています。

もちろん、綺麗事だけでは終わらない現実やら、バイオレンスやらもあるのですが、新聞小説ならではのゆったり感が、「生きてるかぎり、ちゃんと生きたいなあ」とまっすぐに生きている主人公たちの息づかいにピッタリとあっていて、読者も「ちゃんと生きる」ことの幸せを感じ、また「ちゃんと生き」たくなってきます。

さやかの故郷である「バリ」が癒やしの場としてあり続けていることも象徴的で、もしかすると、『サーカスナイト』は、様々なものに渇いてきている現代人たちを癒やすおとぎ話として、紡がれていたのかもしれません。

  • 2018.09.22 Saturday
  • 11:05

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

こうの史代『この世界の片隅に』『夕凪の街 桜の国』

現在TBS・日曜劇場で放映中の松本穂香さん×松坂桃李さん主演のドラマ「この世界の片隅に」の原作漫画です。

女優のんさんが声優をつとめた2016年公開の長編アニメーション映画も話題になりました。私は映画は観ていないのですが、松山でもこの8月に上映している映画館があったくらいで、いまだに人気の映画のようです。どうやら、新しい場面を追加したもう一本の映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』も、今年12月に公開されるそうです。

 


内容は、戦争中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマで、広島市から呉へ嫁いだ主人公のすずが、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑いながら、かけがえのない一日一日を確かに健気に生きていく物語。もちろん、太平洋戦争中の広島ですから、原爆投下は避けて通れない話題です。
現在ドラマでは、明日26日(アジア大会でお休みでした)9月2日の放送が第7話で、予告編を見てみると「運命の日」(原爆投下)となっています。原作本は上・中・下3冊あるのですが、この場面は下の中頃です。7月ー9月期の放送なので、どうやら原作本の内容だけではとどまらないドラマになりそうです。
実は、原作本『この世界の片隅に』は、『夕凪の街 桜の国』の第二弾として作られた漫画とのこと。

『夕凪の街 桜の国』は、原爆投下の10年後、42年後、60年後を一つの家族でつないでいき、敗戦で終わってしまうのではない「戦争」や「原爆」を考えさせられる作品です。個人的には、「終わらない戦争」というメッセージ性に心揺さぶられた『夕凪の街 桜の国』でした。
もしかすると、ドラマにもこの後『夕凪の街 桜の国』的な要素が加わっていくのではないか、と勝手に期待してしまっています。実際ドラマでは、第1話から戦争の時代と平成の現代をつないでいく榮倉奈々さん演じる女性が出てきて、第6話ではすずの娘さんも登場しました。戦争が現代の私たちにどうつながり描かれていくのか…展開が楽しみです。
戦後73年の今年ですが、平成という時代の区切りの年として、ドラマを通しても、もう一度戦争を見つめ直す夏になりそうです。

  • 2018.08.25 Saturday
  • 11:28

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

原田マハ『暗幕のゲルニカ』

アートミステリー『楽園のカンヴァス』に引き続く、アートサスペンス!今回もニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターが主人公です。物語の中心にあるのは、反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの「ゲルニカ」。20世紀のスペイン内戦とナチスの侵攻というピカソの時代と、21世紀の9.11同時多発テロ後のアメリカが交差しながら進んでいきます。芸術の力を信じ、絵画への愛が静かにもたぎっている小説です。

 

 

それにしても、現実に起こった出来事や、実在した人物が織り込まれてくることもあり、フィクションとは思えず、まるで美術歴史小説を読んでいるような気にさせられます。おそらくそれは、原田マハさんのピカソ、そして「ゲルニカ」への深い造詣が生み出す設定の確かさからくるものなのでしょうが、21世紀編に登場する架空の人物たちも実際にいるのではないかとさえ思わされてしまいます。

スペインに本物の「ゲルニカ」を見に行きたくなるのはもちろん、行く予定もないMoMAの展示内容を検索してしまったのは言うまでもありません(笑)ちょうど、8月26日まで群馬県立近代美術館で展示されているという「ゲルニカ(タピスリ)」が(行けもしないのに)気になって仕方がありません。

  • 2018.08.11 Saturday
  • 17:13

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

西加奈子・せきしろ『ダイオウイカは知らないでしょう』

短歌初心者の西加奈子さんとせきしろさんが、雑誌『アンアン』で毎月ゲストを招いてお題を出してもらい、二人がその題の短歌を詠む連載「短歌上等!」が単行本化、そして文庫化された一冊。

ゲストも、穂村弘・俵万智・星野源・山崎ナオコーラ・山里亮太(南海キャンディーズ)・勝山康晴などなど、短歌界に止まらない個性的な14名で、詠まれた短歌を元にした歌会的トークが楽しい。

 

 

上手い短歌を詠もう、というような気負いがまったくない二人で、その潔さというか思い切りが愉快。普段とは違う土俵を得て、やりたい放題楽しんでいる感じが伝わってきます。結果、71題+3題の短歌はもちろん個性的!というか、かなり振り切ってます(笑)

個人的に二人ともの歌が好きだった題は次の3題。この3題ではおとなしめの印象ですが、いえいえもっと驚く歌が沢山待っています(笑)

 

「休み」

ご予約の電話かけたら「かあさん?」て聞こえて切った日曜七時          西加奈子

学校を休んで聞いた風の音 昼ドラで母が泣く声も聞いた      せきしろ

「大仏」

大仏の視線の先にあるものは老婆の群れか土産屋の木刀か     せきしろ

釈迦牟尼の優しい顔は残酷が似合うだろうね「ここが最果て」             西加奈子

「メール」

君だけの着信音と振動と変換されぬ[天狗]と[般若]          西加奈子

受信 送信 受信 送信 受信 受信 無視 受信 無視 送信          せきしろ

  • 2018.08.04 Saturday
  • 15:20