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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

よしもとばなな『サーカスナイト』

2013年の新聞連載時は、毎日楽しみに読んでいました。秋山花さんのイラストも魅力的で、イラストの全てが書籍の挿絵にはならないだろうなと思うと捨てられなくて、結局209回の連載をとっておいた作品でもありました。

再読してみて、毎日新聞で少しずつ読んでいくのと、作品として通して読むのとでは、それぞれのエピソードの重さ加減が違っているなあ…とその印象の違いに驚きました。(詳細を忘れていただけ…という話もありますが…笑)そういう意味では、二度別の楽しみ方ができるのが新聞小説なのかも…と改めて感じました。

 

 

よしもとばななさんと言えば、「死」とか「この世の神秘」といったものが、日常の中にすっと書き込まれるのが特徴的な作家さんという印象なのですが、『サーカスナイト』も、主人公さやかの周りにある数々の「死」や、さやか自身の持つ物の記憶を読み取るサイコメトラー的能力などなど、まさによしもとばななさんらしい一冊となっています。

もちろん、綺麗事だけでは終わらない現実やら、バイオレンスやらもあるのですが、新聞小説ならではのゆったり感が、「生きてるかぎり、ちゃんと生きたいなあ」とまっすぐに生きている主人公たちの息づかいにピッタリとあっていて、読者も「ちゃんと生きる」ことの幸せを感じ、また「ちゃんと生き」たくなってきます。

さやかの故郷である「バリ」が癒やしの場としてあり続けていることも象徴的で、もしかすると、『サーカスナイト』は、様々なものに渇いてきている現代人たちを癒やすおとぎ話として、紡がれていたのかもしれません。

  • 2018.09.22 Saturday
  • 11:05

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

こうの史代『この世界の片隅に』『夕凪の街 桜の国』

現在TBS・日曜劇場で放映中の松本穂香さん×松坂桃李さん主演のドラマ「この世界の片隅に」の原作漫画です。

女優のんさんが声優をつとめた2016年公開の長編アニメーション映画も話題になりました。私は映画は観ていないのですが、松山でもこの8月に上映している映画館があったくらいで、いまだに人気の映画のようです。どうやら、新しい場面を追加したもう一本の映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』も、今年12月に公開されるそうです。

 


内容は、戦争中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマで、広島市から呉へ嫁いだ主人公のすずが、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑いながら、かけがえのない一日一日を確かに健気に生きていく物語。もちろん、太平洋戦争中の広島ですから、原爆投下は避けて通れない話題です。
現在ドラマでは、明日26日(アジア大会でお休みでした)9月2日の放送が第7話で、予告編を見てみると「運命の日」(原爆投下)となっています。原作本は上・中・下3冊あるのですが、この場面は下の中頃です。7月ー9月期の放送なので、どうやら原作本の内容だけではとどまらないドラマになりそうです。
実は、原作本『この世界の片隅に』は、『夕凪の街 桜の国』の第二弾として作られた漫画とのこと。

『夕凪の街 桜の国』は、原爆投下の10年後、42年後、60年後を一つの家族でつないでいき、敗戦で終わってしまうのではない「戦争」や「原爆」を考えさせられる作品です。個人的には、「終わらない戦争」というメッセージ性に心揺さぶられた『夕凪の街 桜の国』でした。
もしかすると、ドラマにもこの後『夕凪の街 桜の国』的な要素が加わっていくのではないか、と勝手に期待してしまっています。実際ドラマでは、第1話から戦争の時代と平成の現代をつないでいく榮倉奈々さん演じる女性が出てきて、第6話ではすずの娘さんも登場しました。戦争が現代の私たちにどうつながり描かれていくのか…展開が楽しみです。
戦後73年の今年ですが、平成という時代の区切りの年として、ドラマを通しても、もう一度戦争を見つめ直す夏になりそうです。

  • 2018.08.25 Saturday
  • 11:28

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

原田マハ『暗幕のゲルニカ』

アートミステリー『楽園のカンヴァス』に引き続く、アートサスペンス!今回もニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターが主人公です。物語の中心にあるのは、反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの「ゲルニカ」。20世紀のスペイン内戦とナチスの侵攻というピカソの時代と、21世紀の9.11同時多発テロ後のアメリカが交差しながら進んでいきます。芸術の力を信じ、絵画への愛が静かにもたぎっている小説です。

 

 

それにしても、現実に起こった出来事や、実在した人物が織り込まれてくることもあり、フィクションとは思えず、まるで美術歴史小説を読んでいるような気にさせられます。おそらくそれは、原田マハさんのピカソ、そして「ゲルニカ」への深い造詣が生み出す設定の確かさからくるものなのでしょうが、21世紀編に登場する架空の人物たちも実際にいるのではないかとさえ思わされてしまいます。

スペインに本物の「ゲルニカ」を見に行きたくなるのはもちろん、行く予定もないMoMAの展示内容を検索してしまったのは言うまでもありません(笑)ちょうど、8月26日まで群馬県立近代美術館で展示されているという「ゲルニカ(タピスリ)」が(行けもしないのに)気になって仕方がありません。

  • 2018.08.11 Saturday
  • 17:13

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

西加奈子・せきしろ『ダイオウイカは知らないでしょう』

短歌初心者の西加奈子さんとせきしろさんが、雑誌『アンアン』で毎月ゲストを招いてお題を出してもらい、二人がその題の短歌を詠む連載「短歌上等!」が単行本化、そして文庫化された一冊。

ゲストも、穂村弘・俵万智・星野源・山崎ナオコーラ・山里亮太(南海キャンディーズ)・勝山康晴などなど、短歌界に止まらない個性的な14名で、詠まれた短歌を元にした歌会的トークが楽しい。

 

 

上手い短歌を詠もう、というような気負いがまったくない二人で、その潔さというか思い切りが愉快。普段とは違う土俵を得て、やりたい放題楽しんでいる感じが伝わってきます。結果、71題+3題の短歌はもちろん個性的!というか、かなり振り切ってます(笑)

個人的に二人ともの歌が好きだった題は次の3題。この3題ではおとなしめの印象ですが、いえいえもっと驚く歌が沢山待っています(笑)

 

「休み」

ご予約の電話かけたら「かあさん?」て聞こえて切った日曜七時          西加奈子

学校を休んで聞いた風の音 昼ドラで母が泣く声も聞いた      せきしろ

「大仏」

大仏の視線の先にあるものは老婆の群れか土産屋の木刀か     せきしろ

釈迦牟尼の優しい顔は残酷が似合うだろうね「ここが最果て」             西加奈子

「メール」

君だけの着信音と振動と変換されぬ[天狗]と[般若]          西加奈子

受信 送信 受信 送信 受信 受信 無視 受信 無視 送信          せきしろ

  • 2018.08.04 Saturday
  • 15:20

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

米澤穂信『満願』

同僚に勧められた米澤穂信。

山本周五郎賞受賞し、「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の「史上初めての三冠を達成したミステリーの金字塔」と触れ込みの『満願』を。個人的には久しぶりのミステリー。

 

 

6編の短編集ですが、「満願」「石榴」「万灯」などの、タイトルの付け方にミステリーの筋の面白さを超えた、メタファーを見いだせそうな作品が好みでした。もちろん、「関守」「夜警」「死人宿」も、ミステリーとして純粋に楽しめる作品で、「関守」などは世の裏側をそれとなく垣間見せる人間の悲劇のような味わいまで。いずれにしろ、ミステリー的謎解きの面白さを用意しながら、その謎解きで読者の心にしこりを残すタイプの結末なのが特徴的な作家さんだなと。そこがたんなるミステリーでない味わいとなり評価に繋がっているのかなと感じました。たまには、ミステリーも良いですね。

  • 2018.07.28 Saturday
  • 00:19

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

河合俊雄『ユング 魂の現実性(リアリティ)』〜現代思想の冒険者たち03〜

哲学者の池田晶子さんが、著書『人生のほんとう』の中で、「ラジカルで面白い」ユング心理学者として紹介していたのが、河合俊雄さん。父・河合隼雄さんが、文化庁長官という立場にあったことを引き合いに出しながら、

「そういう制約の全然ない人が魂の事柄に入り込むと、ああ、なるほどこうなるのかというぐらい、完全に狂気に入り込むことができる。狂気という言葉はもちろん、私にとっては最大の褒め言葉ですけど。(笑)非常に面白い経験でした。」

と。また本書については、

「それがとても読みやすくて、また不気味でよかった。おすすめします。」

と。ということで、全くご縁のなかったユング心理学を!

 

 

まず驚いたのが、「心理学が自然科学とも哲学とも違う」点として、「心理学的な事実、ファンタジーを扱う」としているところでした。神経症に適応していくためには、「現実を造りだし、ひいては神経症を作り出しているファンタジーをいかに見抜いていくかが問題」とのこと。「現実性とは人の魂の活動によって、ファンタジーの働きによってしか与えられない」、それならば、その「魂」とは…という本書。

「自我」「自己」「個性化」「無意識」「結合」「錬金術」などのユング的キーワードはもちろん、フロイトとの決別を盛り込みながら、ユング心理学にどっぷり浸ることができます。なぜ心理学に「錬金術」?との素朴な疑問も、錬金術で生み出した物質ではなくて、その「作業における心理学的な過程に注目」しているのだと分かると納得です。魂の生み出した全てを現実のものとして受け止めていくユング心理学が分かりやすく解かれていきます。

それにしても、ユングが実際に見たという「夢」や「幻覚」の数々に驚きます。3、4歳の頃の夢でさえ、私自身には一生かかっても絶対に見られないような象徴的で、おどろおどろしいもので…。オカルト現象を現実のものとして受け止めるあり方ともあいまって、やはりユングだからこそたどりつけたユングの思想なのを実感した評伝でした。

  • 2018.07.14 Saturday
  • 09:47

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

山田詠美『珠玉の短編』『4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール』

私は通常、胸やけするほどのコッテリとした性愛を描く作家、もしくは、思春期の少年少女の発情の有様に美辞麗句を並べてハッタリかます作家、さらには、手のかかる子供らに無垢という罪状をでっち上げる作家として知られていますが、実は言葉用の重箱の隅をつつく病の重症者なのです。

「言葉用重箱の隅つつき病−あとがきにかえて」より

 

 

『珠玉の短編』は、第42回川端康成文学賞受賞作「生鮮てるてる坊主」を含む11編の短編集。「珠玉」という題名とは真逆の印象を与える作品のオンパレードで、残酷さが山田詠美的毒として注入された、これでもか、これでもか、の11編。テーマもそれぞれ、心に潜む闇をつくような人間の怖さなど、かなり振り切った衝撃的な詠美ワールドですが、そこに「珠玉」をはじめとした、「箱入り娘」「骨まで愛して」「命の洗濯」「蛍雪時代」という死語的(!?)題名を配していくところにも彼女のアイロニーを感じます。彼女の作品群で言うならば、野間文芸賞受賞作『ジェントルマン』的系譜の短編が並んだと言えば分かりやすいかもしれません。もちろん、短編でなくじっくりと読みたくなり、『ジェントルマン』に加え、『学問』まで持ち出してきてしまったのは言うまでもありません。

 

 

『4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール』は女性誌『GINGER』の巻頭エッセイをまとめた一冊。(現在も連載は続いているらしいですが、)初っ端から、女性誌のテーマとなりそうな「自分磨き」や「ポジティブシンキング」にもの申すところから始まり、エイミー節が満載で、ファンはたまらずにやりとしてしまいます。彼女の目指す「腹に一物」持ちながら自分が主人公となって生きる「ユニーク」な女性像には納得で、いわゆるステレオタイプの調和を目指す啓発本よりは、よっぽど血にも肉にもなることうけあいです。

  • 2018.06.30 Saturday
  • 20:59

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

カミュ『異邦人』

「きょう、ママンが死んだ。」の冒頭文であまりにも有名なこの作品。読んでみると、この文章のみから受ける印象とはまったく違った、期せずして殺人者になってしまった男の話であることに驚きます。いやむしろ、世の中の不条理の犠牲になった男と言った方が良いのかもしれません。

 

 

主人公ムルソーは、亡くなった母親の年齢も答えられないし、葬式の翌日に女性と関係を結ぶなど、一見、虚無的とも言えるような無関心さで存在するのですが、読み進めて行くにつれて、本当に虚無と形容して良いのだろうか…と疑問がわいてきます。

もちろん、友人の女出入りに関係して、殺人を犯してしまいながらも、何の自己弁護をすることもなく、動機を「太陽のせい」だとしか答えずに、結果的に裁判で死刑を宣告されてしまうムルソーは、群衆をいらつかせる何かをはらむ無気力な人物のようにも見えます。

しかし、結末で、自らの処刑の日には見物人たちが憎悪の叫びを上げながら自分を迎えることを望むムルソーに至る時、真実を見つめることなくご都合主義で判決を出していく世の中の人々とは違った、達観した人物として描かれているのではないか、とさえ感じられてきます。むしろ、世間の常識という正義でもって人を裁き、結果的に不条理な判決を生み出してしまう一般大衆の方が、よほど危ういのではないかと。

世の中の当たり前に対して「異邦人」でしかいられないムルソー。異端者としてあるものが、葬られるしかない現実を示すため、そして、そんな異端者を盲目的に罰しようとする愚かな一般大衆を暴くために、彼は存在しているのかもしれません。

  • 2018.06.23 Saturday
  • 13:39

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

中島京子『FUTON』・田山花袋『蒲団』

中島京子さんのデビュー作が、なんと日本の自然主義文学の代表作であり、私小説の出発点ともいわれる田山花袋『蒲団』のパロディだったとは!

『蒲団』は、妻も子もいる中年の小説家(竹中時雄)が、一方的にプラトニックな思いを寄せる女弟子(横山芳子)が男性問題で故郷に帰された後に、残された部屋で彼女の使っていた蒲団や夜着に顔をうずめて泣く話として有名で、実際にモデルがいたこともあり、「赤裸々な内面を大胆に告白」した面が取り上げられる作品です。

 

 

『FUTON』は、アメリカの花袋研究家であるデイブ・マッコーリーが主人公で、『蒲団』の時雄、芳子、そしてその恋人田中の三角関係(?)に似た関係が、デイブ、エミ、ユウキの中で繰り広げられます。しかし、三角関係と言いながらも、時雄の恋(のようなもの)は中年男の一方的なものですから、人物→人物△悗了廚い箸靴童るならば、時雄→芳子の関係に似たものは、『FUTON』の登場人物の中にいくつもの関係を見つけることができます。ウメキチ、イズミなど…いくつもの人物の絡み合いも読みどころです。

そして、何より面白いのは、合間に挟まれる、デイブ・マッコーリーの書く「蒲団の打ち直し」という小説です。これは『蒲団』では「旧式」の女性で名前も与えられていなかった時雄の妻目線で書かれたもので、「美穂」という名を与えられた彼女の煩悶が手に取るように分かります。そして、彼女が最後にたどり着く先が、これまた『蒲団』に書かれていなかった別次元の問題へと発展していきそうなところで終わり、そうきたか!、とうならされます。

『蒲団』から『FUTON』の順番で読まれることをオススメします。

  • 2018.06.16 Saturday
  • 13:49

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

斉藤美奈子『名作うしろ読み』

願わくは名作のオコボレを少しでも長く頂戴できますように。

 

鋭い論調でスカッと愉快になる文芸評論家・斉藤美奈子さんの本はどれも読んでも面白いのですが、『名作うしろ読み』は、本を読んでいなくても、名作の冒頭部分を知っている人は沢山いることの逆の発想からの一冊です。「名作は“お尻”を知っても面白い!」と銘打ち、「お尻がわかったくらいで興味が半減する本など、最初からたいした価値はないのである」と言ってのけ、名作132冊を最後の一文から読み解いていく文学案内です。お尻から入るので、本の内容も大変入ってきやすいのがこのスタイルの利点です。

読売新聞夕刊のコラムが元となっていることもあり、一冊の紹介は見開き2ページで読みやすい分量。しかも、読書案内の中に斎藤美奈子流の斬新な読みを呈示するという面白さです!

上の引用は文庫版のあとがきの最後の一文ですが、単行本版の最後の一文

 

評論のラストはとかく説教臭くなるのが問題なのだ。

 

とともに、自分の書さえもバッサバッサと切っていくような痛快ささえあります。おそらく、作品によっては、読者自身の読みと違って、アレッ? そうかな? と読者が同意できない案内があることも想定内で、むしろ、それを恐れずに、自分なりの振り切った読みを楽しんでもらうことに主眼をおいているのだろうなと感じました。

 

 

読売新聞の連載は続き、続編『名作うしろ読みプレミアム』がすでに単行本化されているようです。どう「プレミアム」なのか、こちらも興味津々です。

今回改めて読んでみたいな、と思った作品も多かったのですが、未読で特に心ひかれているのが、中上健次『紀州―木の国・根の国物語』。芥川賞受賞作の『岬』とともに読んでみたいと思っています。

とにかく、紹介された132冊が読みたくなること間違いなし!です。

  • 2018.06.02 Saturday
  • 00:28