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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

平野啓一郎『日蝕・一月物語』

平野啓一郎さんといえば、『マチネの終わりに』の映画化で話題ですが、ベストセラーの恋愛小説を読む前に先に平野さんの作品の感じが知りたくて、『日蝕・一月物語』を手に取りました。『日蝕・一月物語』は、平野さんが「ロマンティック三部作」と呼ぶ初期3部作のうちの2編で、どちらも擬古文的独特の文体で書かれていますが、それぞれの時代を映すために時代に即した文体が選ばれていて、「日蝕」(中世ヨーロッパ)よりも、「一月物語」(明治三十年)の方が読みやすくなっています。

 

 

第120回芥川賞を受賞したデビュー作の「日蝕」は、中世キリスト教世界における、異教哲学への関心をもちながら、異端を取り込んだ新しい神学の構築を胸に抱く神学僧・二コラが主人公です。彼が旅の中で出会っていく、「錬金術師」「両性具有者」、そして、「魔女焚刑」の場に起こった「日蝕」と「賢者の石」。異教を「太陽の所為(せい)」と考えていた二コラが、「日蝕」の際に得た世界との一体感を思う時、最終的に「錬金術」の作業に就き、「一刹那一刹那に、或る奇妙な確信を以て世界の渾てと直に接していると感じている」結末は必然であるように感じました。

錬金術の把握の仕方に、「錬金術で生み出した物質ではなくて、その『作業における心理学的な過程に注目』」するユング心理学的視点を感じさせられる小説でもありました。

 

「一月物語」も、主人公が自分の追い求めていたものを、本来とは違ったものではありながら、結果的に自身の納得する形で手に入れていく主人公が描かれる意味では、「日蝕」と同テーマともいえる作品でした。

明治という時代で「自己」を手に入れ、「奈何なる形を以て己の情熱を成就させるべきか」を問う若き詩人・井原真拆が、浦島伝説の竜宮にも比せられる、夢か幻か分からないような場所に迷い込み、「ラッヴ」という「愛したいという情熱」を手に入れ、「超越的な存在と一体化する」までが、耽美的に描かれていきます。

「一刹那にのみ、忽然と存在して消える」盲人の世界に「幸福」を思い描いていた真拆にとって、見つめると殺めてしまう見毒を持つ夢の女・高子の存在も象徴的です。高子との「予告される未来を持たない一個の絶対の瞬間。独り肉体によってのみ、行為によってのみ、導かれるその瞬間」によって、彼は絶対的な自己を手に入れ、魂と共に昇華されたのでしょう。

  • 2019.11.09 Saturday
  • 22:02

実践報告・お便り

続・オーサー・ビジット2019 in 福岡女学院高校

「オーサー・ビジット2019 in 福岡女学院高校」にて、副会長の句会ライブレポートを紹介しましたが、続編としまして、同校数学科の松崎亮先生が担当されているクラスの「学級通信」をご紹介いたします。

松崎先生は、これまで全く俳句にかかわったことがなっかったそうで、初めて俳句に出会った体験をリアルにまとめてくださっています。

 

(画像をクリックすると、PDFファイルでご覧いただけます)

 

また、福岡女学院高校の谷口奈々美先生からは、

 

オーサービジットのおかげさまで、これを手始めとして、来月から有志で、月一回の放課後句会を始めることとなりました。

生徒達に火がついて、いつき先生からご伝授いただいたことを使ってさらに作品を書きたいとのこと。

自由に句会をして、「NHK」や「松山俳句ポスト365に投稿しようというくらいの軽いのりで長く続けてはどうか? ということが決まりました。

まずは放課後のラーニングカフェの続きとしてやってみます。

 

とのお便りも頂いております。

 

これまでも、ラーニングカフェやクラス句会など様々な実践を重ねてきた福岡女学院高校で、オーサー・ビジットで火の付いた生徒さんたちのがどのように活動していくのか、たいへん楽しみです。これからも、ご報告をお待ちしております。

  • 2019.11.04 Monday
  • 18:50

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

恩田陸『蜜蜂と遠雷』『祝祭と予感』

2017年の直木賞&本屋大賞ダブル受賞作『蜜蜂と遠雷』が映画化で話題ですが、スピンオフ短編小説集『祝祭と予感』も刊行されています。

ピアノコンクールを描いた『蜜蜂と遠雷』は、奏者の演奏する曲がBGMとして脳内で再生される中で、登場人物の高揚感や達成感に共感していくので、読者も否応なしに盛り上がり、心地よいカタルシスが得られるような作品です。実際、何度もウルウルさせられました。音楽への愛がテーマともいえる小説で、エンターテインメントの要素も一面的でなく、芸術に携わる者の側面や書き込まれていて懐が深く、直木賞と本屋大賞は、それぞれに別の部分を評価したのだろうなと感じた小説でした。

 

 

スピンオフ短編集『祝祭と予感』は、『蜜蜂と遠雷』の結果が気になる読者の期待に応えるかのように、コンクール後の亜夜・マサル・塵の三人のエピソード「祝祭と掃苔」から始まります。審査員ナサニエルと三枝子の出会いの「獅子と芍薬」、課題曲「春と修羅」の誕生譚「袈裟と鞦韆」、ナサニエルとマサル師弟の物語「竪琴と葦笛」、ヴィオラ奏者・奏が主人公で亜夜と塵も登場する「鈴蘭と階段」、と続いていき、読者が一番待っていたであろう塵とホフマンの出会いを描く「伝説と予感」で閉めくくられます。「祝祭」から「予感」へと、物語の時間が逆に流れていくのも乙な構成の短編集でした。

映画では、課題曲「春と修羅」が演奏され、4人それぞれのカデンツァ(即興演奏)も盛り込まれているそうで、気になってしまっています。

  • 2019.11.02 Saturday
  • 08:25

実践報告・お便り

総社市立総社東中学校の実践

総社市立総社東中学校の中原真智子先生よりお送りいただきました実践のご紹介です。

全て掲載が可能ということですので、資料をそのまま掲載いたします。

中原先生は、昨年の倉敷で行われた副会長の句会ライブに参加されたそうで、夏井の句会ライブでの内容も反映した資料となっております。ぜひご参考になさってください。

 

授業で使用するプリント

春夏秋冬の全てを作成

(秋のプリントと春のイラストを掲載)

(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

 

生徒作品をまとめた国語通信(国語の授業で配布)

(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

 

中原先生が参加された「句会ライブ」の記録

(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

 

卒業生のためのプレゼン資料

(句会ライブの内容「直伝・俳句作りのコツ」も紹介)

「先生方から卒業する君たちへ贈るうた」も必見!

(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

 

卒業生作品

「直伝・俳句作りのコツ」を紹介前(H28年度)&紹介後(H30年度)

(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

 

国語教員やオバ様仲間など大人向けの通信〜趣味で配布〜

(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

 

中原先生が出版されたエッセイもご紹介

『旅するマダム 英語も地図もネットも苦手な私が世界を旅した7年の記録』ペンネームは、中マチ子さん。

Amazonでもお求めいただけます。

英語、インターネットが苦手で、地図も読めない。
おまけに極度の方向音痴の私が、世界を旅することにしたのは、2011年、東日本大震災で被災した気仙沼の友との会話からだった。
以来、世界を知ろうと心に決め、各地を旅した7年間の記録がこの一冊に詰まっている。
振り返って思うのは、旅をすると自分が見えてくるということ。

さあ、私にだってできたんだ。何も恐れず旅に出よう。世界を、そして自分を知るために。(オビ裏面より)

 

中原先生は、4年前まで中国蘇州の日本人学校で、小学1年生から中学3年生まで全校生徒に海外俳句も作らせて楽しまれていたとのことです。「短い詩型の中で思いを写真のように刻みつけるにはいいですよね。」とのメッセージもいただいております。

 

中原真智子先生、ご実践をお送りいただきましてありがとうございました。

これからも、先生の実践報告が拝見できますのを楽しみにしております。

  • 2019.10.27 Sunday
  • 15:05

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

浜崎慎治『共感スイッチ』

au「三太郎」、家庭教師のトライ「トライさん」、日野自動車「ヒノノニトン」のCMと言えば、誰もが一度は目にし、記憶に残っているCMの代表的なものと言えますが、これらは全てCMディレクター・浜崎慎治さんの作品なのだそうです。私自身も大好きなユニークなCMを作った浜崎さんがどのようなことを語るのか、興味津々で読み始めました。

「共感スイッチ」とは、誰もが持っている「相手の心に何かを残す突破口を開」くための「鍵」のこと。浜崎さんが、CMをつくるコツだと考えている「共感」にスポットを当てて、おもしろスイッチ(インパクト)・鳥取スイッチ(ベタ)・次男スイッチ(バランス)・ 国立大スイッチ(共通理解)・教室スイッチ(記号)・朝ドラスイッチ(反復)・父親スイッチ(信頼)・自分スイッチ(軸)の8つに分類した共感スイッチが、浜崎さん自身の生活や考え方を具体例にだしながら語られていきます。

 

 

独創的なCMディレクターということで、私たちでは思いもつかないようなクリエイターとしてのアイデアが語られるのだろうと想像しながら読んでいったのですが、一番意外だったのが、「鳥取スイッチ」で語られた「『ベタ』はすごい」でした。

 

CMは決して芸術ではありません。もちろん、扱う商品によるかもしれませんが、公共の電波を用いて全国のお茶の間に流す以上、「わかる人だけにわかる」は不合格。子ども、若者、主婦、お年寄り、まずはみんなにわかるところから始めるのが理想です。

 

CMでは、全員がわかる「ベタ」を起点にして次を考えた方がスマートだという考え方にはハッとさせられました。また、以前は「誰かの力に頼らなくても、センスやアイデアで突破できる」とカッコつけていたが、「センスやアイデアがあるなら、それをさらに有名なタレントさんと一緒に作れば最強」と考えるようになったそうで、「全然知らない」から始めるよりも「知っている」から始める方が記憶に残るという「ど真ん中」理論には納得させられました。

もちろん、書籍では「ベタ」で「ど真ん中」を押さえたうえで、工夫しているところなども語られていくのですが(それは読んでいただくこととして)、CMに限らず日常生活においても、理想ばかりを求めるのではなく、目的にそって選ぶべきベストがあることに気づかせてくれた一冊となりました。

  • 2019.10.26 Saturday
  • 10:05