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w closet×JUGEM

俳句関連・書籍など 紹介

関川夏央『子規、最後の八年』

「二十八歳で脊髄カリエスを発症し、三十五歳で逝った正岡子規」の晩年の8年間をたどる子規の評伝です。『短歌研究』2007年1月号〜2010年7月号までの3年半の連載が元になっています。

 

子規の表現欲、旧文芸に対する改革欲、「親分」欲、「座」を主宰することへの演劇的情熱、そして食欲、どれをとっても病臥後のほうがはっきりしているし、またはなはだしいのである。子規の本領は、その早すぎた晩年のほうにある。「あとがき」より

 

 

研究的価値のある文献の引用も多い上に、晩年の8年間に主眼を置きながら、晩年につながっていくそれ以前の出来事についても詳しく、また、子規周辺の人物たちが丁寧に描かれているのが特徴です。夏目漱石については、全編を通してページがさかれ、高浜虚子・河東碧梧桐・伊藤 左千夫・長塚節・秋山真之・妹の律はもちろん、樋口一葉まで。(その他にも様々な人物が登場します)とにかく、子規と関わっていく一人一人に立ち止まっていくことで、子規をとりまく全てを、そして、明治という時代を描き出そうとする筆者の熱意を感じる一冊でした。

 

骨に食い入ってカリエスを起こす結核菌とは、当時の医学では戦いようがない。しかるに、飽くことのない食欲と見物欲、それに表現欲が希望に似た空気を全体に淡く満たす。それこそが子規のパーソナリティであり、また子規が呼吸した時代精神のあらわれでもあっただろう。

  • 2020.09.13 Sunday
  • 14:31

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

三島由紀夫『青の時代』

河野多惠子さんと山田詠美さんの『文学問答』で、「認めざるをえないという三島作品」として挙げられていたのが『青の時代』で、ずっと読んでみたいと気になっていました。

『青の時代』は、実際に起こった「光クラブ事件」をモチーフに書かれた作品で、東京大学の学生でありながら高利貸し業務を行って検挙され服毒自殺をした山崎晃嗣(小説では川崎誠)を主人公に、検挙にいたる前までの会社が下り坂になる予兆までが描かれます。興味深いことに、どうやらモデルとなった山崎晃嗣は、同じく東大生だった三島の知人だったと言われているようです。

「序」で三島は、「僕の書きたいのは贋物の行動の小説なんだ。まじめな贋物の英雄譚なんだ」と言っています。そして、主人公誠の贋物の英雄ぶりを浮かび上がらせるものとして、対照的に描かれているのが再従兄の易(やすし)です。人と同じであることを嫌悪し、金銭に価値を認めずにただ事態を見極めて超然と過ごそうとする自分を誇る誠に対して、何の取柄もない一般人の象徴のように描かれる易なのですが、誠が易の自然さを軽蔑しきれないばかりか、誠にとっての救いのように随所で描かれているのが印象的です。誠が誠自身が演じている贋物の英雄ならば、易は誠にとっての本物の英雄であるとでも言わんばかりです。

 

 

そして、要所要所で登場する「緑いろの鉛筆」が効いています。幼い誠が欲しがり何とか手に入れながらも、父の教育観により無惨にも手放すことになった張子の鉛筆も緑いろ。父への反抗心を持つきっかけとなったのがこの鉛筆ならば、、事業投資の金融詐欺に遭い、まんまと10万円を騙し取られてしまったのも、巨大な緑色の鉛筆の中に文房具一式が詰まっている玩具に心を惹かれたためでした。この詐欺にあったことが、誠が高利貸業に手を染めるきっかけとなるのですから意味深です。しかも小説のラストに、商売の行き詰まりや誠の服毒の最期を匂わせる一方で、誠に「自分の存在が一種透明なものになる稀な快い瞬間」が与えられる場面でも緑いろの鉛筆が登場します。

喫茶店で粗末な格好をした易と恋人らしき少女が、午前の日をふんだんに浴びながら会話しているのですが、この場面で易は、緑いろの鉛筆でいそがしそうに手帖に何かを書いています。この誠が快く眺めているこの瞬間に罅を入れるのが、誠の脳裏に聞こえてきた「誠や、あれは売り物ではありません」という声(張子の鉛筆をほしがった幼い時の誠が言われた言葉)であるのも象徴的です。

贋物の英雄である誠にどうしても手に入れることができず、万人の象徴である易に簡単に手に入るものが「緑いろの鉛筆」であったという事実。他者と同じであることを嫌悪していた誠は、結局は、他者が簡単に手に入れていた最も卑属なものをずっと手に入れようとしていた、と言うのはなんとも皮肉です。作者が、これから誠がむかえることになるだろう破滅的最期を書かなかったのは、むしろ贋物の英雄(誠)が抱えている虚無を描きたかったからかもしれません。

  • 2020.08.30 Sunday
  • 23:17

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

窪美澄『ふがいない僕は空を見た』

以前から気になっていた窪美澄さんの一冊を。『ふがいない僕は空を見た』は、第24回山本周五郎賞、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10の1位、2011年本屋大賞2位、女による女のためのR-18文学賞大賞受賞し、映画化もされた話題作です。以前から気になっていた窪美澄さんの一冊を。『ふがいない僕は空を見た』は、第24回山本周五郎賞、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10の1位、2011年本屋大賞2位、女による女のためのR-18文学賞大賞受賞し、映画化もされた話題作です。

 

 

5編からなる連作長編で、助産師の息子・高校生の斎藤卓巳をはじめとして、彼を取り巻く別々の人物が主人公に据えられているので、各作品の中で同じ登場人物たちが違った視点から描き出されていくことになります。一作目の「ミクマリ」がR-18文学受賞作ということもあり、女性が書く「性」をメインにしている感じで読み始めましたが、編を重ねていくうちに、何の救いも用意されていないような生きづらい世の中を生きる人々の「生」が浮き彫りになっていくような作品だな、と印象が変わっていきました。行き場のない人生に翻弄される登場人物たちのオンパレードなのですが、全編を通して「出産」という「生」を真ん中に据えているところに、この物語を支える希望があるようにも思いました。

と言いながら、生まれることが必ずしも幸福とは言えない現実はあまりにも残酷です……。

その最たるものが、全登場人物の中で、最も追い詰められたところにいる高校生の福田と言えるかもしれません。父は自殺、母に見捨てられ、認知症で他者に迷惑をかけ続ける祖母の面倒を見ながら、貧困の中食べるものすらままならない福田。にもかかわらず、そんな彼が、極限状態にいる自分をそっちのけに、他人のために「いじわるな神さま」に祈る現実を、切なくまた哀しく受け止め、作者の人間への信頼を見たように感じました。

同時に映画も鑑賞。本と同様、やはり、窪田正孝さん演じる福田良太が気になって仕方がありませんでした。

  • 2020.08.16 Sunday
  • 16:06

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

中村文則『土の中の子供』

『教団X』がいろんな要素がある小説だったので、どこが中村文則さんの持ち味なのか気になったのもあり、芥川賞受賞作『土の中の子供』を手に取ってみました。

背表紙には、次のように紹介されています。

 

27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。理不尽に引きこまれる被虐体験に、生との健全な距離を見失った「私」は、自身の半生を呪い持てあましながらも、暴力に乱された精神の暗部にかすかな生の核心をさぐる。人間の業と希望を正面から追求し、賞賛を集めた新世代の芥川賞受賞作。著者初の短篇「蜘蛛の声」を併録。

 

土の中に生き埋めにさせるなどの被虐体験だけにとどまらない、命を危険にさらすような「恐怖」をもたらす出来事の数々が次々に主人公を襲ってきます。その中には、主人公自らが引き寄せようとしたものもあり、また、偶然に見舞われたものもありますが、どの出来事も、それを克服することで主人公自身が立ち上がる力を得ていくというような、イニシエーション的出来事となっているように感じました。

 

 

彼が立ち向かおうとするのは、「この世界の、目に見えない暗闇の奥に確かに存在する、暴力的に人間や生物を支配しようとする運命というものに対して、そして、力のないものに対し、圧倒的な力を行使しようとする、全ての存在」です。ギリギリまで自分を追い詰めていくことで、自らを脅かしてきた恐怖や理不尽を凌駕していく主人公。だからこそ、これ以上の悲惨さはないと思われるような彼の人生であっても、読者はそこに希望を見ることができるのだと感じました。

同時収録の「蜘蛛の声」は、「土の中の子供」とは逆に内に入り込んでしまう主人公の話でした。両者を並べて読むことで、人は、おかれている精神状態や状況によって、外向かって立ち向かう力を手に入れることもあれば、内に向かって力を蓄える時間も必要なのだろうと感じさせられました。

  • 2020.08.01 Saturday
  • 17:24

俳句関連・書籍など 紹介

夏井いつき『子規を「ギャ句゛」る 名句をひねると「ギャ句゛」になりました』

副会長の新刊です。

「ギャ句゛」とは、「最少の言葉変換で最大の意味変換」を狙う「知的言葉遊び」です。
YouTubeでの「夏井いつき俳句チャンネル」でも、
【名句をギャグに!】ギャ句゛で俳句のトレーニング
の回で分かりやすく解説されていますので参考にされてください。

 

 

今回は、正岡子規の名句を「ギャ句゛」ろうという企画!

ブログで募集して集まった2243句の中から選ばれた「ギャ句゛」が星付けと共に紹介されています。

また、ギャ句゛界重鎮☆金子どうだセンセーの上級講座もついています!

新書で「角度を変えた俳句の楽しみ方、ギャ句゛」の世界をのぞいてみませんか!

 

 

ギャ句゛技もたくさんでてきて楽しめます!

 

【職業変換】雉(きじ)→知事(ちじ)(動物を、ヒネリの聞いた時事を意識できる職業に!)
【ぎなた変換】話(はなし)・上手(じょうず)な(な)→歯(は)・無(な)し(し)・ジョーズ(じょーず)を(を)(語の切れ目を変える!)
【匂い付変換】花(はな)を(を)折る(おる)→鼻(はな)折れる(おれる)(風流な動作が、かなり痛い状況に!)
【アナグラム変換】顔(かお)見(み)ゆる(ゆる)→由美(ゆみ)かおる(かおる)(5音の並び・語順を替えて人名に変換!)
【アルファベット変換】ある(ある)僧(そう)→ALSOK(あるそっく) (お坊さんが警備保障会社」に!)
【シチュエーション変換】三寸(さんずん)→散々(さんざん)(具体的な数値から、一音でガラリと状況を変える!)

 

どんな子規句がどんなギャ句゛になっているかぜひ確かめてみてください!

  • 2020.07.18 Saturday
  • 20:55