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w closet×JUGEM

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

加藤千恵『ハッピー☆アイスクリーム』

加藤千恵さんの17歳の時のデビュー歌集『ハッピーアイスクリーム』のリミックス版とも言える一冊。オリジナルの短歌全てに加えて、自らの高校生の時の短歌を元にした高校生を主人公とした切ない青春小説5編を収録。

高校生の短歌…というと、いかにもありがちな恋の歌を想像するかもしれませんが、いえいえ、甘っちょろいとこで終わらないリアルなナマの女子高生がそこにあります。また、これを元にした短編も、これまた少しずつヒネりがきいていて、願い通りには進んで行かない現実を受け止めようとする等身大の高校生が浮かび上がってきます。もちろん、担当している高校生たちに紹介しました。

「ハッピーアイスクリーム」とは、「会話中、偶然同時に同じ言葉を言ってしまった時に言い合う言葉」で、早く言えたほうが勝ちとか、アイスをおごってもらえるとかというものです。まさに、短歌も小説も、どれも高校生が「ハッピーアイスクリーム」と思わず口ずさんでしまうような高校生「アルアル」感でしめられた一冊でした。

 

 

重要と書かれた文字を写していく なぜ重要かわからないまま

傷ついたほうが偉いと思ってる人はあっちへ行って下さい

泣きそうになるのは誰のせいでもなく時おり強い風が吹くから

カラオケに行ったしコーラも飲んだけどやっぱりさみしいもんはさみしい

「燃やすとき公害になる」補聴器の電池を抜いた入棺のとき

走ってるつもりだったけどもしかしたら走らされてるのかもしれない

いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いてる気がする

夕立が街ごと洗い流すのをどこかで待っていたのだと思う

永遠に醒めない夢はそれはもう夢ではなくてべつの何かだ

いつだって見えないものに覆われて知らないものに守られている

  • 2018.10.20 Saturday
  • 13:56

俳句関連・書籍など 紹介

岡田一実『記憶における沼とその他の在処』

ふじみんこと岡田一実さんの第3句集。『記憶沼』という通称で呼ばれています。

 

 

「な、なんだ、これは!」

読み始めて数ページで、一句一句の濃密さに射貫かれてしまいました。十七音ごとに立ち止まらずにはいられない、もったいなくて簡単には進めない、そんな句が並びます。

,泙砂充群擦了蹐縫疋リとする→△修海砲△辰慎┯譴縫魯辰箸気擦蕕譴→0豢腓了蹐筏┯譴僚伝慇にまたドキリとする

変幻自在なふじみんの俳句はこんな風に染み入ってきます。

 

 

「真正面から」

蟻の上をのぼりて蟻や百合の中

阿波踊この世の空気天へ押す

椿落つ傷みつつ且つ喰はれつつ

 

「裏切りも」

秋晴や毒ゆたかなる処方箋

その中に倒木を組む泉かな

瓜の馬反故紙に美しき誤字のあり

 

「届く五感」

喉に沿ひ食道に沿ひ水澄めり

口中のちりめんじやこに目が沢山

体内を菅は隈なし百千鳥

 

「飄々と」

喪の人も僧も西瓜の種を吐く

端居して首の高さの揃ひけり

文様のあやしき亀を賀状に描く

 

「まっすぐ」

細胞に核の意識や黴の花

みづうみの芯の動かぬ良夜かな

龍天に昇るに顎の一途かな

 

「無常…」

宗教に西瓜に汁の赤さかな

死者いつも確かに死者で柿に色

常闇を巨きな鳥の渡りけり

 

空洞の世界を藤のはびこるよ

白藤や此の世を続く水の音

 

この世もあの世も私も、実は一体で「空洞の世界」があるだけではないか。では、その私とは…。もしかすると、私とは「記憶」そのものなのではないか。そんなふうに感じさせられる句集です。

では、「記憶における沼」とは…。何かが堆積し、また何かが育ちゆくような沼。もしかすると私たちは、時にはそんな沼に停滞しながら、また時には「その他の在処」を確かめながら、自分なりの記憶の形でここにあるということなのかもしれません。

裸木になりつつある木その他の木

「裸木」に目をやることがあれば、「その他の木」を真正面から詠むこともあるように。

手のひらにちょうどいい、少し小さめの句集であるのも、人の内にある「記憶」のサイズのようです。美しい装丁そのままに、あり続ける「水の音」のように、ふじみんの俳句とは、そんな記憶という彼女自身なのでしょう。

 

(句集『記憶における沼とその他の在処』出版記念パーティーにて)

  • 2018.10.13 Saturday
  • 10:13

募集&ご案内

公開講座のご案内

中学生から社会人を対象とする、「つくる、わかる!俳句入門」の公開講座が、東京家政学院中学校・高等学校で開催されます。

充実の講師陣の講座が無料で参加できるとのこと。〆切は10月13日(土)。

詳細は以下(東京家政学院中学校・高等学校HPより引用)をご覧ください。

 

公開講座のおしらせ

ごきげんよう。

東京家政学院中学高等学校公開講座を以下の通り実施します。ぜひご参加ください!

つくる、わかる!俳句入門

【日時】10/27(土)・11/17(土)・11/24(土)・12/1(土) 14:00〜16:30予定

【対象】中学生〜社会人(定員15名程度/10/13(土)しめきり)

【講師】鴇田智哉先生・堀下翔先生・関悦史先生・佐藤文香先生(サブ講師:児島豊(本校教諭))

【費用】無料

初心者も経験者も、俳句の作りかた・読みかたを楽しく学んでみませんか?

内容・申し込み方法の詳細は以下のpdfファイルを御覧ください。

公開講座俳句PR.pdf

東京家政学院中高公開講座申込用紙.pdf

  • 2018.10.10 Wednesday
  • 19:06

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

村田沙耶香『殺人出産』

前回好い出会いをさせてもらったので、引き続き村田沙耶香さんを。

思いもよらない…。これは近未来の日本なのでしょうか…。

人が人工授精でしか子供を産まなくなってしまった時代。偶発的な出産がなくなったことで、人口が減り、恋愛や結婚とは別に命を生み出す自然なシステムが必要となり、そこで作り出されたのが、10人産んだら1人殺しても良いという「殺人出産制度」。殺人の意味が大きく変わり、それを行う人が「産み人」として崇められる世の中です。一方、「産み人」としての正しい手続きを取らずに殺人を犯す(命を奪う)と、「産刑」といって、男性も人工子宮を埋め込まれて、一生牢獄の中で命を産み続ける刑に処せられます。そして、「産み人」に殺される「死に人」は、皆のために犠牲になった素晴らしい人として送り出される…。未来の命をつなぐのが、殺意であるという驚きのスト-リーでした。

 

 

「産み人」として10人目の出産を迎えようとしている主人公育子の姉・環。姉自身も「産み人」から産まれているので、育子とは血が繋がりません。もちろん、他の産み人や死に人たちも話に絡んでくるのですが、さて、姉が抱いている殺意とは…。そして、象徴的な名を持つ育子の選択する道とは…。命短いものの代名詞でもある「蟬」の使い方も絶妙で…。何が正しいのか間違っているのか…すっかり村田沙耶香ワールドに取り込まれてしまいます。殺人を真ん中に据えながら、おどろおどろしさを感じさせないのも驚きでした。

その他の3つの短編も、どれも想像を超えた驚きの設定!朝井リョウさんなどの作家仲間が、村田沙耶香さんのことを、愛をこめて「クレイジー沙耶香」と呼んでいる理由の一つに触れられた気がしました(笑)

  • 2018.10.06 Saturday
  • 14:38

備忘録〜個人的・書籍の感想〜

村田沙耶香『コンビニ人間』

第155回芥川賞作品の文庫化。

驚きました! 新しいものに出会えた喜び、という意味では(常に驚かされ続けている朝井リョウさんの作品をのぞけば、)西加奈子さんの『サラバ!』以来の衝撃度で、私のどストライクの作品でした!

 

 

社会が求めている「普通」とは? 幼い頃から「自分は何かを修正しなくてはならない」「治らなくては」ならない人間だと自覚している主人公古倉恵子。いわゆる「普通」からはみ出した自分を自覚しながら、「『普通の人間』の定型」に気付いていく主人公の目線は、無意識に社会不適合者をはじき出しそうとする「普通」の人間たちが、いかに乱暴でマニュアル的であるかをあぶり出していきます。

一体何が正常なのか…。そして、結局は一番見えていて、一番考えている主人公…。そこに関わってくるコンビニという存在…。コンビニについては、ネタバレになるので作品を読んでもらうしかないのですが、「普通」と私たちが信じている社会の隠された矛盾をつきながら、読者それぞれが問いかけられているような作品でした。本当に面白かった!

  • 2018.09.29 Saturday
  • 16:10